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日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

コロンビアで大繁殖のカバ、特定外来種リスト入り間近

©️iStock - pjmalsbury

2月15日は「世界カバの日」なのだそうです。

カバと聞けば水面から目と鼻を出しプカプカ浮いている姿や、水辺をのそのそゆっくり歩く姿が想像できるかもしれません。しかしそんなイメージとは打って変わり、実際のカバはとても俊敏で凶暴。陸上動物の中ではゾウ、サイについで3番目に重いにも関わらず時速40キロとウサイン・ボルト選手より速いスピードで走ることができ、アフリカでは年間500人もの人がカバに襲われ命を落としていると言われています。

そんなカバですが、実は絶滅の危機に頻しており国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種としてレッドリストに指定されているのだそう。アフリカで開発が進み生息地が減少していることが原因のようですが、一方南米コロンビアではカバの繁殖が止められず社会問題になっています。

カバがコロンビアに持ち込まれた経緯やコロンビア政府が新たに行った繁殖対策などについては、昨年10月のブログにまとめてありますのでそちらをご覧ください。

「麻薬王のカバ」VS コロンビア 新しい避妊薬で繁殖阻止できるか?

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©️iStock - Oskanov

 

カバを特定外来種に指定?

コロンビア国立大学とフンボルト研究所が合同で行った研究をもとに、環境省のカルロス・エドゥアルド大臣は「今日130頭のカバがコロンビアに生息している。我々が対策を講じない場合、それは2030年には400頭に増えるだろう。カバたちはエコシステムや保護地区、野生のカピバラやマナティに影響を与え、マグダレナ川沿いの人々にも危険を及ぼすことになる」としてカバをコロンビアの特別外来種に指定するために動き出す決意を表明。エドゥアルド大臣にはこれからどのような方法でカバの繁殖を防ぐのかの具体的なプランの設定が求められていますが、国民の意見や価値観は多種多様でこの決断を安易に下すことは不可能と言えるでしょう。「全てのオプションについて調査を進めなければならない。去勢や避妊、他にもたくさんの可能性があるので一つ一つを再度確認していく予定だ。」とエドゥアルド大臣は慎重な姿勢を見せています。

もしカバが特定外来種リストに正式に加わればカバの売買、所持、意図的な繁殖を法律で取り締まることができ、繁殖防止に対し国の資金的援助をより受けやすくなるそうです。

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©️iStock - Tristan Barrington Photography

  

殺処分は避けられない

数年前から問題になっているコロンビアのカバの大繁殖。これを止めるためには殺処分は避けられないと専門家たちは語っています。

しかしこれだけ生態系に悪影響を及ぼしていながらも、コロンビアではカバを殺処分することに反対の声を上げる人がたくさんいるのが現実。

「生息地から離れたところで法律は制定される。我々はカバと共存できているし、殺そうと思ったことは一度もない。カバはすでにアフリカの動物ではなくてコロンビアの動物だ。」とカバが生息するプエルトトリウンフォに住むイザベル・ロメロさんは殺処分の必要性を否定し、カバに対する愛着を示しています。

オンライン署名収集ができるウェブサイトchange.orgには「コロンビアのカバたちが殺害されるリスクに犯されている!」というキャンペーンが作成され、世界カバの日には多くの動物保護団体が署名を求める呼びかけをSNSを通じて行っているのも目にしました。

また同日に首都ボゴタではルイス・ゴメス議員が「何人かは我々を殺したがっているが、我々は彼らを守りたいのだ(Algunos nos quieren matar Nosotros lis quieremos salvar)」と書かれたカバの形をしたボードを持ち、殺処分に対し抗議の意を示しました。

ゴメス議員は代替案として、1)外科手術やゴナコンを用いての避妊去勢 2)輸送 3)柵で囲む 4)SAE S.A.S(混合経済企業)からの資金援助 の4つの案を提示しています。

以前のコロンビアのカバに関する投稿で、遠距離から投与可能なゴナコンという避妊薬での避妊去勢作戦を行ったことについて紹介しましたが、ゴナコンのコストは1匹あたり1000ドルと高額。その上現在コロンビアではゴナコンの在庫が尽きてしまったそう。殺処分の代替案としてよく挙げられるのがこの避妊・去勢ですが、カバの繁殖に十分追いつけていない避妊・去勢という選択肢は不可能でないにしろ現実的ではなさそうです。

  

密売で更なる危険も

環境関連の話題を中心としたアメリカのニュースサイト、モンガ・ベイではディアナ・パチョン記者が実際にカバの密売者にインタビューを行った記事が搭載されています。

このインタビューが行われたのはドラダルというカバの主な生息地からは少し離れた村。この村では以前からカバの密売が噂されていましたが地元警察はその事実を拒否しています。しかし、地元の密売者は「これまで最低でも7匹のカバがトラックに積まれて警察署の前を通ったことがある」と証言しており、この密売は黙認されているといって間違いはないでしょう。

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©️iStock - vbel71

このモンガ・ベイの記事によると密売者が売っているのはカバの赤ちゃんで、販売価格は1800ドルほど。まん丸な目で中型犬サイズの可愛らしい赤ちゃんカバを見ると飼えてしまうような気さえしてしまいますが、これが後に全長5メートル体重2トンの最強哺乳類に成長することを忘れてはいけません。

実際に買われていったカバの赤ちゃんたちは現在コロンビアのあちこちで生活している事になるわけですが、成長して手に負えなくなったあと彼らは一体どこにいくのでしょうか。もし無責任な飼い主が大きくなったカバを近くの川に捨ててしまった場合、そこで繁殖が起こってしまうことも否定はできません。そうなると今はマグダレナ川沿いに止まっているカバの生息地がコロンビア全土に広がり、生態系や地元住民への被害がさらに拡大する可能性も十分考えられるでしょう。

  

世界カバの日は本来「絶滅危惧種のカバについて学び知るきっかけを作る日」なのだそうですが、私にとっては「コロンビアでカバの繁殖を抑えるにはどの方法がベストなのかを考える日」となった2月15日でした。皆さんは殺処分には賛成ですか?

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

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