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ラッシャー貴子|イギリス

ロンドンの暮らしから見たウクライナ侵攻

皮肉にも、この侵攻をきっかけにウクライナのことを知るようになった。てっぺんに金色の玉ねぎが乗っているようなエキゾチックな教会、素朴な刺繍がかわいらしい民族衣装、よく肥えた黒土が広がる世界の穀倉地帯、そして見渡す限りのひまわり畑。とてもよさそうなところだ。ウクライナに1日も早く穏やかな日々が戻りますように。写真iStock-Anna Koberska

ロシアのウクライナ侵攻に世界中が心を痛めている。ウクライナへの寄付や支援、反戦デモ、ロシアへの経済制裁やロシア製品のボイコットなどが起きているのは英国も日本と同じだ。ただ、地つづきでないとはいえ、同じヨーロッパで起きていることを日々感じている。

ウクライナ問題は、英国では2月半ばからコロナの話題をおしのけて連日トップで伝えられ、ヨーロッパやNATO加盟国との話し合いも頻繁に続いて緊張が高まっていた。攻撃開始から2週間経った今も、主なニュースの8割くらいはウクライナ関連で、ロシア国内、ウクライナからの避難先の周辺国、NATO会議、欧州議会の様子も詳しい中継が入る。

3月8日にはウクライナのゼレンスキー大統領が英国議会でオンライン演説も行った。議会に大歓迎された大統領は、スピーチ後に大きな拍手とスタンディングオベーションで支持された。

BBCポリティックスのツイートから、ゼレンスキー大統領の演説のダイジェスト。後半では、議会には多くの議員が集まって、席がぎゅうぎゅう詰めになっているのがわかる。大統領の演説にはシェイクスピアやウィンストン・チャーチルの言葉が引用された。

救援物資をライトバンに詰め込んで、ウクライナや避難民が集まる周辺の国に運び込む話を見聞きする時にも、地理的な近さを実感する。物資のリスト(薬、おむつ、毛布、スマホの充電器など)や収集場所の情報はわたしのところにも毎日のように回ってきていた。金銭の寄付もずいぶん増えているけれど、小さな団体や個人で物資を運ぶ活動は今も続いている。3月8日の時点ですでに200万人がウクライナを離れているので、すぐに必要なものもあるだろう。荷造りや運転をするボランティアたちは口々に、「体を動かさずにはいられない、何かしなくてはいられない」と話す。

この何かしたい気持ちは、特に男性の場合、戦いへの参加にもつながる。祖国を守るために英国から去っていくウクライナ人男性のことがよく報じられ、中には自分の意思で戦いに志願する英国人もいる(英国は軍隊をウクライナに派遣していない)。英国やアメリカなどから集まった元兵士たちが現地や周辺に到着しているそうだ。

紛争のたびにこういうがあると聞いてはいたものの、そういう人たちは特に正義感が強かったり、戦うことが好きだったりする特別な人だと思っていた。けれど先日、わが家のフラット(集合住宅)の中年の管理人さんの口からその話が出たので、驚いてしまった。明るくて親切で評判のいい彼は世間話の途中で、「小さな子どもがいなかったら、絶対に志願していた。許せん!」と涙を流さんばかりに語り始めたのだ。ふだん穏やかな彼の、どこにそんな熱さが隠れていたんだろう。行かれないとわかっていて、ただそう話しているだけかもしれないけれど、もどかしい気持ちと怒りはじゅうぶん伝わってきた。

ちなみに、今は英国民のウクライナ行き自体が禁止されているので、個人で戦いに加わることは許可されない。実行すると、英国に戻ってから事情を聞かれたりするらしい(ウクライナで今、パスポートにスタンプを押しているとは思えないけれど)。当初、外務大臣が「英国人志願兵を支持する」と発言したので混乱があったものの、今は政府や軍も、「気持ちはよくわかるが、個人行動は避けて、支援をしたければ寄付をしたり、英国軍に入隊したりしてほしい」と呼びかけている。

ロンドン市長サディク・カーンさんのインスタグラム投稿から、ウクライナカラーに染まるロンドンの夜。国とはまた別に、ロンドン市長も早くからウクライナ支持を示した。

ロシアへの経済制裁の結果、石油、ガス、小麦などの価格高騰が予想されるのも日本と同じだ。ガソリンはもうすでにスタンドで見かけるたびに値上がりしていて、3月10日の平均価格は史上最高の1ポンド60ペンス(約240円)。経済制裁の一環として、政府は今年の終わりまでにロシアからの原油輸入をすべて停止するので、値上がりはますます加速しそうだ。

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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