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Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア

平野美紀|オーストラリア

荒野に佇む隠れ家グランピングで 究極のアウトバック体験

究極のアウトバック体験ができるクイーンズランド州内陸部のラグジュアリー・グランピング「レンジランズ・アウトバック・キャンプ」。(2023年5月筆者撮影)

「アウトバック」とは何か?

オーストラリアでは、内陸部の人口希薄地帯を「アウトバック」と呼ぶ。そこは、人工物が目に入ることなどない未開の荒野。手つかずの自然がそのままに残り、大地と空を分ける地平線がどこまでも続く。目に痛いほど青い空はどこまでも高く、赤茶けた大地を照らす太陽と月が日々の移ろいを教えてくれる。時計など要らない。

英語で「辺鄙なところ」のことを「In the Middle of Nowhere」というが、アウトバックはまさにそんな場所だ。

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クイーンズランド州内陸部のアウトバック・タウン「ウィントン」。(2023年5月筆者撮影)

オーストラリア政府観光局の説明によれば、「アウトバック」とはこんなところでもある。

アウトバックは、ただ広大なだけでなく多様な地域であり、印象的な自然の驚異を目の当たりにしながら、世界最古の生きた文化に浸ることができる場所(日本語ページ
原文:The outback is a region that is as diverse as it is vast, it's a place to see impressive natural wonders while immersing yourself in the world's oldest living culture.

オーストラリアは、どちらかというと海沿いのエリアが人気のディスティネーションだが、アウトバックに惹かれて何度も訪れているというリピーターも意外と多い。アウトバックには、海沿いのエリアで見られるような華やかさはない。お洒落なカフェやレストラン、着飾っていくような店はどこにもない。それでも、アウトバックに惹かれるのはなぜか?

かくいう私自身もアウトバックに魅せられ、何度となく足を運んでいる一人だが、都市の喧騒に紛れて日々暮らしていると、何もないことこそ究極の贅沢なのだと感じるからなのかもしれない。

クイーンズランド州の内陸部にひっそりと佇むラグジュアリー・グランピング

クイーンズランド州は、ゴールドコーストやケアンズ、そして世界遺産でもあるグレートバリアリーフといった「海」のイメージがとくに強いが、内陸部のアウトバックには「海」にも負けない多彩な魅力が詰まっている。

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大自然に囲まれたアウトバックにひっそりと佇む隠れ家のようなテントに宿泊。(2023年5月筆者撮影)

そのひとつが、州内陸部の町「ウィントン」の郊外に佇む、アウトバックの大自然を満喫できる究極の隠れ家「レンジランズ・アウトバック・キャンプ」。客室となっているテント数はわずか6。なかなか予約がとれないという知る人ぞ知るラグジュアリー・グランピングだ。

満天の星空に包まれ、大地の鼓動を聞きながら眠る

レンジランズ・アウトバック・キャンプは、アウトバックの町ウィントンから車で15分ほど。最後の数キロは未舗装のグラベル・ロードとなる。大き目の岩がいくつも点在する緩やかな坂を上きると、宿の顔に当たるメイン・テントに到着。

高台に建つメイン・テントから続くラウンジを兼ねたデッキからの眺めは、とにかく絶景だ。どこまでも果てしなく続く荒野、ところどころに低灌木が生えているものの、人工物は一切見えない。青い空と赤茶けた大地。これぞ、アウトバック!という風景が目の前に広がる。

夕暮れ時、どこまでも続く地平線の彼方に大きな太陽がゆっくりと沈んでいくのを眺めながら、スパークリング・ワインで夕日に乾杯。心が洗われるような壮大なサンセットに、太古の昔の風景はこんな感じだったのだろうか?と思わずにはいられないほどだ。

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左上:サンセットの前にスパークリング・ワインで乾杯! 左下:各テントのプライベート・デッキから夕日を眺める。右上:広々としたテント内。右下:ディナーは3コース、メイン・テントでいただく。(2023年5月筆者撮影)

宿泊用テントは、環境に配慮した素材を使い、センスのよい空間を作り出している。隣のテントとは適度な距離が保たれ、プライベート・スペースを確保しているのもうれしい。各テントは、個別の太陽光パネルが設置されたオフグリッド設計になっているそうだ。

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デッキで涼みながら月明かりに照らしだされる荒野の風景を眺めるのもまた格別。(2023年5月筆者撮影)

広々としたテント内には、ゆったりとしたキングサイズのベッドが入り、アウトドアを満喫できるシャワールームと洗面スペース、自然に囲まれたウッドデッキが付いている。ここからサンセットを眺めるのもいい。夜には、降ってきそうなほどの満天の星空に包まれ、自然の音だけをBGMに眠りにつくのだ。

荒野のアウトバックで至福のディナー

レンジランズ・アウトバック・キャンプは、食事も素晴らしい。食前酒と共にデッキでアペタイザーをいただいた後、この日のメイン料理は「鴨肉のワインソース添え」。デザートも絶品で、「何もないアウトバックでこんなにおいしいものが食べられるなんて!」と、思わず感嘆の声をあげてしまったほどだ。

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ディナーの前にはメイン・デッキで焚火を眺めながら、食前酒とアペタイザーで寛ぎの時間...(2023年5月筆者撮影)

朝食には、スキレットに入った温かい「シャクシューカ」と「サラダ」、「フルーツとグラノーラを入れて食べるヨーグルト」。どれもこれも、メイン・デッキの横に置かれたキッチン・バンで作っているとは思えないものばかりだ。

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左:ディナーのメイン料理「鴨のワインソース添え」 右上:ディナーのデザート「チョコレートフォンダン」 右下:朝食の「シャクシューカ」と「サラダ」。(2023年5月筆者撮影)

朝食を食べたら、すぐ近くにある「レンジランド・リフト」を散策。何万年もの長い歳月をかけて自然の浸食によってできた岩の回廊だ。その昔、先住民の人々がシェルターとして利用してきたというロック・フォーメーション(岩石群)は、自然の脅威を目の当たりにできる。

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自然が生み出した奇妙な造形が青空に映える「レンジランド・リフト」。(2023年5月筆者撮影)

午後は、ウィントンを一躍有名にしている博物館「オーストラリアン・エイジ・オブ・ダイナソー」へ出かけよう。ウィントンは、「オーストラリアン・ダイナソー・トレイル(オーストラリアの恐竜トレイル)」と呼ばれる一角に位置しており、このエリア最大の見どころである恐竜博物館は、絶対に見逃せない。

ロマンをくすぐるワンダーランドのようなクイーンズランド州のアウトバック。一度訪れたなら、一生忘れられない場所になるに違いない。〈了〉

<お知らせ> 「オーストラリアン・エイジ・オブ・ダイナソー」については、追ってご紹介する予定です。


私がウィントンに行ってきた翌週 5/12の豪チャンネル9の番組「Today」で、この「レンジランズ・アウトバック・キャンプ」が紹介されていました!※動画は該当箇所から再生します。(豪チャンネル9「Today」公式YouTubeより)


Rangelands Outback Campレンジランズ・アウトバック・キャンプ

Special thanks to:Tourism Australia, Tourism and Event Queensland, Rangelands Outback Camp

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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