コラム

党内左派の圧力に苦慮するバイデン政権の悲惨な未来

2021年11月26日(金)15時15分

残された最後のインフレ対策であるFRBによる利上げは、バイデン政権と民主党にとって中間選挙での破局的な結末に繋がることになる。バイデン政権は利上げに相対的に積極的なパウエル議長を再任したが、この人事は「バイデン政権が利上げ以外の方法でインフレ抑制が困難であると判断した」と受け止めるべきである。

民主党左派が推進する政策で自縄自縛の状態に

しかし、FRBによる利上げは米株式市場に対して冷や水を浴びせる懸念がある。そして、たとえ利上げによってインフレが抑制されたとしても、米国民にとっては当たり前の状態に戻るだけだ。それによってバイデン政権に対する評価が上がることはないだろう。

逆に利上げに伴う株価の下落は中間層や高齢者を中心とした資産運用者の懐を直撃することになる。その結果として、米国民の間でバイデン政権の経済政策に対する反発が強まり、エネルギー規制緩和と強力な減税政策を主張する共和党への支持が上昇することは想像に難くない。

バイデン政権は民主党左派が推進する政策によって自縄自縛の状態に陥っている。その上、今後、来年11月の中間選挙が近づくにつれて、左派の影響力は更に拡大していく。バイデン政権にこの状況を改善する有効な手立ては存在していない。したがって、バイデン政権が中間選挙後にレイムダック化する見通しは日々強まっていると言えるだろう。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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