コラム

日本の「純水」を世界の子供たちに届けよう

2023年12月19日(火)21時22分
トニー・ラズロ(ジャーナリスト、講師)
スーパーなどで気軽に入手できる「RO水」

SERGEYRYZHOV/ISTOCK

<安心安全な水がいつでも手に入る日本だが、世界ではそんな「当たり前」が存在しない国も。日本の高い技術力で世界の子供たちに救いの手を差し伸べよう>

昨年、東京の中心部から神奈川県のとある町に引っ越したのだが、荷ほどきをしながら飲み水をどうしようかと考えている。本来は、あまり悩むような話ではないだろう。

日本の水道水は飲んでも安全だと認められ、蛇口をひねれば、好きなだけ飲める。でも......。私は素直に水道水を選べない。


まずは個人的な理由から。最近知ったのだが、私が育った米ニュージャージー州にある町の水質は決して良いとは言えなかった。

当時は古い給水管が使われ、鉛が水道水にかなり含まれていたようだ。子供の頃、体に悪いものをずっと体に入れ摂取していたとすれば、今はもっと気を付けたい。たとえ、安全な日本でそうする必要がなくても。

水道水を飲まないもう1つの理由は、「郷に入っては郷に従え」という考えを重んじているからだ。私の周りの日本人で水道水をそのまま飲んでいる人はそう多くない。

沸かしてから使う人をはじめ、浄水器を設置したり、ボトルウオーターを消費したりする人もいる。彼らを見ていると、念のため、自分も何かの工夫をしたほうがいいような気になってくる。

工夫といえば最近、新しい給水オプションを見つけた。一部のスーパーが提供する無料の水だ。この多くは「RO水」と言われ、「reverse osmosis(逆浸透)」のフィルターによって浄化される。

このフィルターは塩分やバクテリア、鉛、カドミウム、水銀などを通さない。なかなか避けられない厄介なPFAS(有機フッ素化合物。永遠の化学物質= Forever Chemicals とも言われる)だって、この優れた逆浸透フィルターシステムが閉め出してくれる。多くの浄水器の水やボトルウオーターよりもピュアで、正真正銘の「純水」に近いと言える。

アメリカでもRO水は知られているが、これは大抵、硬水対策として、だ。土壌の影響で硫酸マグネシウムや炭酸カルシウムが水道水に多く含まれる地域での緊急措置としての意味合いが大きい。

一方の日本。うちの近所では専用ボトルを数百円で買えば、スーパーにある専用ウオーターサーバーを使っていつでも「純水」を無料でもらえる。

人気があるので、水をもらうのに10分ほど列に並ぶときもある。4リットルのボトルをスーパーから持って帰るのはやや不便だが、RO水が簡単かつほぼ無料で入手できるのはうれしい。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米シティ、ライトハイザー元通商代表をシニアアドバイ

ビジネス

アップル、関税で今四半期9億ドルコスト増 1─3月

ビジネス

米国株式市場=上昇、ダウ・S&P8連騰 マイクロソ

ビジネス

加藤財務相、為替はベセント財務長官との間で協議 先
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story