コラム

申請理由は「旅行」に限る?...パスポート発給を拒否する「国が被告」の不思議な裁判の行方

2023年07月13日(木)15時43分
西村カリン(ジャーナリスト)

なぜなら、ジャーナリストが戦争や紛争のある国に行くのは当たり前だと思うから。他国のマスコミの取材に依存すれば情報源を確認することは難しいし、独立した取材ができない。

もちろん人質になるリスクや殺されるリスクがあることは否定できないけれど、フランスの場合は戦場に行く記者を批判するよりも応援する。

安田さんはその一例として、「海外の場合、拘束された記者が帰国する際には大統領が出迎えに行く」と語った。それは事実だ。

今回の裁判で最もびっくりしたのは、国の弁護士の態度だった。安田さんへの質問はただ一つ。旅券を申請した目的は旅行だけだったのか。質問の意図は明らかだった。

安田さんは旅行目的で旅券を申請したが、実はまた取材に行くつもりだった、と国の弁護士は言いたかったのではないか。

でも、その質問も意図も無意味だと私は思う。パスポートを申請する際、今後10年間でどんな目的でどこへ行くかを書く必要はない。次の渡航の目的を説明するだけで済む。

国の弁護士がほかの質問をしなかったことは何らかの戦略があるのかもしれないけれど、あまりにも理解しづらい。

罪のない人のパスポートを発給しないことは、ちゃんとした説明がなければ誰も納得できない。国は4年以上もその説明責任を果たしていない。


magTokyoEye_Nishimura.jpg西村カリン
KARYN NISHIMURA
1970年フランス生まれ。パリ第8大学で学び、ラジオ局などを経て1997年に来日。AFP通信東京特派員となり、現在はフリージャーナリストとして活動。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』など。Twitter:@karyn_nishi

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラク、ホルムズ通過でイランと協議 トルコ向け油送

ワールド

イラン最高安保委事務局長のラリジャニ氏標的に攻撃と

ワールド

タリバン「病院空爆で400人死亡」、パキスタンは軍

ビジネス

日産が九州工場で1週間約1200台減産へ、中東情勢
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 9
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story