「力が支配する世界」へ回帰? トランプ「私に国際法は必要ない」発言の意味
TRUMP’S ANTI-MORAL MORALITY
例えば、アテネの人々は奴隷制を「力の正義」、すなわち強者はやりたいことをやれる一例と考えたかもしれないが、現代人は違う。奴隷を持たないし、男性にも女性にも法的に対等の地位がある。また、拷問は禁止されているし、動物虐待を禁じる法律もある。
確かに、こうした進歩は完璧とは程遠い。だが、ミラーやトランプは、これらが進歩であることも否定するだろうか。もし、進歩だと認めるなら、われわれの道徳観はさらに進歩する可能性があり、そのために努力するのであって、これまでの進歩を葬り去る理由にはならない。
同じことが国際関係にも言える。第1次大戦の末期、将来このような大惨事が繰り返されることを防ぐために、ウィルソン米大統領つまりトランプの先達は、国際連盟の設立を提唱した。
国際連盟は第2次大戦を防ぐことはできなかったが、その後継組織である国際連合は、過去80年間にわたり大国間の戦争を防ぐことに貢献してきた可能性がある。
この功績は軽々しく切り捨てられるべきではない。今後の国際関係の行方は、世界の国々が、超大国が身勝手に覇権を振りかざしていた時代への回帰を受け入れるか、それとも最強の国の責任もきちんと問えるかに懸かっている。
ピーター・シンガー
PETER SINGER
プリンストン大学名誉教授(生命倫理学)。著書『動物の解放』(1975年)で注目を集めた。NPO団体The Life You Can Save(あなたが救える命)創設者。オーストラリア出身。
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