なぜイスラエルは「水」で優位に立つのか──気候変動時代の中東外交
THE GEOPOLITICS OF WATER
干上がったヨルダンの首都アンマン近郊のワラ・ダム(24年3月) CONTIGO/GETTY IMAGES
<数年にわたる干ばつの末、イランのモスクでは人々が天を仰ぎ雨を祈った。しかし、祈りだけでは深刻化する水危機は止められない。気候変動と人為的な水資源管理の失敗が重なり、中東では今、水が重要な地政学的争点として浮上している。そうした中、水資源を戦略的に管理・活用してきたイスラエルは、地域で独自の優位を築いている>
▼目次
気候変動で「水」が中東外交の中心に
「水」を制するイスラエルの戦略
気候変動で「水」が中東外交の中心に
イランでは2025年11月、数年にわたる干ばつが「現代で前例のない」深刻な状態に達した。首都テヘランのモスク(イスラム礼拝所)には大勢の礼拝者が集い、顔を天に向け雨乞いをしたが、祈りの力だけでは根深い水資源管理の誤りと、その背景で加速する気候変動を無効化することはできない。
イランは長年、野放図なダム建設、ずさんな都市計画、過剰な補助金、技術革新への抵抗を続けてきた。そこに干ばつによる砂漠化、森林伐採、持続不可能な農業慣行が加われば、水が主要な国家的リスク要因に浮上したのも不思議ではない。
6年連続の深刻な干ばつでイランの水資源問題は今や重大危機を迎えた。テヘランを支える貯水池の水位は危険なレベルまで低下し、ペゼシュキアン大統領は首都圏約1500万の住民に避難が必要になる可能性があると警告した。イラン全土で見ても、ダムの約10%が干上がっている。
イランだけではない。国連開発計画(UNDP)によると、シリアは06年から11年にかけて「肥沃な三日月地帯で数千年前に農業文明が始まって以来、最悪の長期干ばつと最も深刻な凶作」に直面した。この干ばつに拍車をかけたのが、アサド前大統領の残忍な反体制派弾圧と、それに続く内戦の長期化だ。シリアでは内戦中、ほとんどの水処理施設と揚水施設が破壊された。
トルコがチグリス川とユーフラテス川に大規模ダムと水力発電所を建設したことも状況を悪化させている。これにより下流のシリアとイラクでは両河川の流量が大幅に減少した。やはり長年の紛争と不適切な水管理に苦しむイラクでは1975年以降、水供給量が推定80%減っている。
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