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反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...参政党拡大のため神谷が行った「大博打」

THE SANSEITO SURGE

2025年11月15日(土)08時00分
広野真嗣(ノンフィクション作家)

変化しながら拡大した組織ならではの弱みもある。主要な歳出増を足し上げただけでも80兆円を優に超える財政出動に伴う財源やインフレ加速のリスクを聞くと、神谷は「これからも緊縮財政なら将来はもっと暗くなる。とんでもないことになるかもしれないが、どこかで勝負しないと」と賭け事のような言い方をした。心意気に任せて突進する発想は「分断」の先を見据える者として心もとない。

吸収と離反を高速回転させてきたがために党内の熟議が足りず、生煮えでも発信し、後に釈明に追われる。このあたりに党の弱点がある。その芯の弱さを見透かされ、有権者の目線がまた別の「新しい店」に移る可能性もあるだろう。


参政党の登場は、私たち国民の今を反映している。参政党を偏った党と批判する側も、参政党側も、自らの正義を振りかざして、対話を怠れば、神谷が「起きなければならぬ」と半ば仕掛ける分断を広げることになる。

相手にあり、自分にないものを見いだすことから始めるなら、私の発見はこの政党の成り立ちだ。世襲議員や支持基盤が幅を利かせる政党が弱体化するなか、参政党は今の政治に足掛かりを持たない人たちを可視化した。その未熟さと危うさを知りつつ票を投じた有権者と話すと、希望を託す先のない状況を打開せよというメッセージだと改めて思う。

その民意は与党を敗北させ、自公連立破談にもつながった。今も、政治の新たな回答を待っている。



※本記事は4本構成の第4弾です。第1~3弾は以下よりご覧ください。

第1弾:「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂を生む理由...神谷代表が語った「分断」とは?

第2弾:「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイメージは誤解? 参政党を支える「意外な支持層」とは

第3弾:自民党を去りドン底も経験...参政党の神谷が今、政治を動かす「巨人」にまで成り上がった変貌劇

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