またTACOった...トランプのグリーンランド武力併合案に共和党内からも呆れ声、国内からも大反対
On Shaky Ground
「グリーンランドは売り物じゃない」というプラカードを掲げる住民のデモ(1月17日) AP/AFLO
<米国内からも反対一色の、実現性ゼロのグリーンランド併合案。トランプの野望は失敗に終わる可能性が高い>
世界の報道を見ていると、ドナルド・トランプ米大統領がすぐにもデンマークの自治領グリーンランドの併合に乗り出すかに感じられる。なにしろトランプは、いきなりベネズエラに米軍を送り込み、ニコラス・マドゥロ大統領をアメリカに連行させた男だ。
この成功に勢いを得て、トランプはグリーンランドについても強気の発言をするようになった。反対する国には追加関税をちらつかせ、ヨーロッパ諸国の首脳が個人的に送ったメッセージを勝手に公表したり、自分がグリーンランドに米国旗を掲げるAI画像を拡散したりもしている。
だが、その一方で、トランプにグリーンランドの野望を断念させる可能性のある事態が、静かに進行している。
アメリカがグリーンランドの領有権を獲得する方法は、外交交渉か、買い取りか、武力行使かの3つだ。このうち外交による獲得は、1月中旬にホワイトハウスを訪れたグリーンランドとデンマークの外相が「根本的な意見の相違」を指摘するなど、合意がまとまる気配は全くない。
島を買うのも無理そうだ。そもそもグリーンランドは売り物ではないと住民はカンカンだし、たとえトランプがゴネても、そんな支出は米議会が許さないだろう。
すると、残る選択肢は武力の行使だけになる。
国内の支持はたった4%
だが、これはアメリカ国内で極めて不評だ。調査会社イプソスの最近の調査では、支持率はわずか4%となっている。これを知ったトランプは既に武力によるグリーンランド併合案を引っ込めつつある。最近の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でも、「武力を使う必要はない。私は武力を使いたくないし、使うつもりもない」と語った。
もちろん、こうした発言をどこまで信用していいのかは分からない。なにしろトランプは、「平和の大統領」を自称しつつ、イランを爆撃し、ベネズエラに侵攻した。ただ、外交もカネも武力も使えないとなると、トランプにまともな選択肢は残っていない。
それどころか、トランプの政治基盤は揺らいでおり、造反者が出る恐れもある。トランプに翻弄されっ放しの議会共和党も、グリーンランド獲得に関しては、反対の立場を明確にしている。マドゥロ拘束作戦を成功させた米軍も、同盟国であるNATO加盟国を攻撃することには躊躇する声が出るだろう。
それにデンマークやフランスなどヨーロッパのNATO加盟国は、グリーンランドに自国軍を相次ぎ派遣している。米軍が本気で侵攻すれば太刀打ちできない規模とはいえ、陽動部隊としての役割は果たせる。この部隊が攻撃を受ければ、毅然とした対応を求める声が各国内で高まるからだ。
トランプ政権は、グリーンランドを乗っ取っても、ヨーロッパ諸国の軍事的な抵抗には遭わず、「おとがめなし」で終わると高をくくっているようだ。しかし陽動部隊の存在は、安易な勝利は得られず、アメリカが大きな代償を被る可能性を示唆している。
ボイコットが広がるか
軍事面だけでなく、貿易面や外交面でも、ヨーロッパ諸国はトランプ政権の脅しに対抗する方法を話し合っている。その最大の方法は、アメリカの製品やサービスのEU市場へのアクセスを大幅に制限する反威圧措置(別名「貿易バズーカ」)だ。
一般市民のレベルでは、ボイコット(不買運動)が広がる可能性がある。既に昨年、トランプ関税に怒った一部の国の市民が、アメリカ製品をボイコットしている。
それが最も大規模に展開されたのが、カナダだ。「カナダを併合する」というトランプの度重なる脅しに怒った人々は、アメリカへの旅行を減らすようになり、アメリカ産の食品や酒類を避けて、国産品に切り替えた。
カナダの人口はさほど大きくないが、こうした行動はアメリカの産業に着実にダメージを与えてきた。それをEUがやったらどうなるか。24年のアメリカの対EU輸出は約6650億ドルと、アメリカの雇用やビジネスを支える大きな市場の1つとなっている。
アメリカの企業にとっては、消費者が政府や企業の調達に圧力をかけることも心配だ。ヨーロッパの政府や企業がマイクロソフトやグーグル、ボーイングといったアメリカの大手企業の商品やサービスの調達をやめれば、トランプ政権の無謀な政策が、アメリカで最も価値の高い企業ブランドを傷つけることになる。
それでも、トランプ政権のゴリ押しは終わらないだろう。それがもたらすのは、屈辱的な敗北だ。グリーンランド併合の脅しは、「90日で90の貿易協定をまとめる」とか、オバマケア(医療保険制度改革法)を「廃止して(新しい制度に)置き換える」といった、過去のトランプの大言壮語と同じ運命をたどるだろう。
だが、最も親しい同盟国を裏切ろうとした事実は、トランプ政権後も、アメリカを長く苦しめるはずだ。
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Eric Van Rythoven, Instructor in Political Science, Carleton University
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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