「最後の手段」と呼ばれる薬も効かない...「悪夢の耐性菌」が急増中と米CDC警告、感染を防ぐには?
‘Nightmare Bacteria’ Surge in US Poses ‘Grave Danger’: Expert
拡大を防ぐには?
CDCは、NDM遺伝子を保有する細菌の拡散には、医療目的の旅行(メディカル・ツーリズム)を含めた旅行や、不十分な感染対策が関与していると警告している。
NDM遺伝子を保有する細菌が医療施設に侵入すると、汚染された器具や表面、あるいは無症状の保菌者を通じて広がるおそれがあるという。
CDCの科学者たちは、NDMを有する薬剤耐性菌の保菌者の多くが自覚のないまま保菌している可能性が高く、そのことが地域社会での感染拡大につながる恐れがあると警告している。報告書の著者の1人であるマロヤ・ウォルターズ博士は、尿路感染症のような一般的な感染症ですら治療が困難になる可能性があると指摘する。
エモリー大学の感染症研究者であるデービッド・ワイスはAP通信に対し、「NDMの増加は非常に危険であり、深く憂慮すべき事態だ」と語っている。
また、ワシントン大学の研究者ジェイソン・バーンハム博士は、「パンデミック期間中に抗生物質の使用量が大幅に増加したことが、薬剤耐性の増加に反映されているのだろう」と分析した。
NDMに立ち向かうため、CDCはより強力な監視体制、細菌株のゲノム解析、積極的な感染対策の実施、新たな抗生物質および診断技術への投資を呼びかけている。しかし研究者たちは、こうした取り組みが細菌の進化のスピードに追いつかない可能性があると指摘する。
患者や介護者は、手洗いや医療機器の滅菌、施設における感染対策の確認といった厳格な衛生管理を徹底することで、感染防止に貢献できる。医療機関は、スクリーニング、隔離、そして抗生物質の使用に関する厳格な管理体制をさらに強化しなければならない。
CDCはこの状況を率直に「NDMによる細菌感染の増加は、もはや単なる医学的関心事などではなく、拡大の一途をたどる公衆衛生上の非常事態」と位置づけている。
関係機関が手を取り合って迅速に対応しなければ、「悪夢のバクテリア」がもたらす代償はさらに甚大なものになるだろう。