最新記事
BOOKS

夫が盗撮犯として2度も逮捕...その妻を「家族だから」と非難する人たち

2025年9月15日(月)09時52分
印南敦史(作家、書評家)

夫の両親から「あなたがもっと...」と責められる

定期検診のため病院の待合室にいた妊娠8か月のB子さんの携帯電話に、見知らぬ番号からの着信があった。不安を感じながら出てみると警察署からで、「お宅のご主人が盗撮行為で現行犯逮捕されました」と告げられたのである。


その瞬間から、看護師としても充実した日々を送っていたB子の日常は一変した。
 B子の夫は医師だった。ふたりは同じ大学病院で出会い、結婚。それぞれ異なる病院に勤務しながら、第一子を授かり、順調な生活を送っていた。このまま普通の幸せな家庭が築けると思っていた矢先の逮捕だった。
 逮捕後、医師による盗撮事件として、メディアにも多数取り上げられた。夫の病院には報道関係者が押しかけ、B子の勤務先にも取材の電話が相次いだ。(36〜37ページより)

夫は示談が成立して不起訴となったものの、勤めていた病院は解雇。再就職は困難を極めたが、経済的にはB子さんの収入でなんとか生活できる状況だったという。とはいえ、医療関係者の間では当然ながら噂が広がり、夫婦は地域を離れる決意をした。

夫の両親からは「あなたがもっとあの子のことを理解していれば」と責められ(おかしな話だ)、B子さんは離婚も考えはした。しかし、生まれてくる子どものことを考えると決断できなかったようだ。


 ある日突然、夫が性犯罪で逮捕された妻の苦しみは、父親や母親とは別次元のものです。性犯罪者の妻は「なぜ夫はそんなことをしたのか?」という疑問、同じ女性として被害者への罪悪感、夫への生理的な嫌悪感や怒りが湧き上がり、引き裂かれます。このB子さんも妻として、新たに生まれてくる子どもの母親として、そしてひとりの女性として、二重三重の苦しみに挟まれています。このような状況を加害者家族における「ダブルバインド現象」と呼んでいます。(37〜38ページより)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

SNS情報提出義務化、米国訪問に「委縮効果」も 業

ビジネス

三菱UFJFG社長に半沢氏が昇格、銀行頭取は大沢氏

ビジネス

午後3時のドルは154円後半、米雇用統計控え上値重

ワールド

インド総合PMI、12月は58.9に低下 10カ月
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中