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夫が盗撮犯として2度も逮捕...その妻を「家族だから」と非難する人たち

2025年9月15日(月)09時52分
印南敦史(作家、書評家)
盗撮される女性

TY Lim-shutterstock

<妊娠中に夫が盗撮で逮捕、でも離婚せず――。加害者家族は「隠れた被害者」とも欧米では呼ばれるが、日本ではそうではない>

『夫が痴漢で逮捕されました――性犯罪と「加害者家族」』(斉藤章佳・著、朝日新書)の著者は、ソーシャルワーカーとしてこれまで1000人を超える性犯罪の加害者家族に関わってきたという。

言うまでもなく加害者家族とは、事件を起こした本人の親、パートナー、子ども、きょうだいなどを指す。欧米では「隠れた被害者(hidden victims)」とも呼ばれ、法制度や地域社会において支援の仕組みが整えられているようだ。

ところが日本ではいまだ、その認識が根づいているとは言えない。


 彼らは自分が罪を犯したわけでもないのに、「家族だから」という理由で心理的・社会的・経済的に追い詰められ、なかには自死を選ぶ人すらいます。さらに事件が性犯罪ともなれば、加害者家族には強い嫌悪感や感情的な非難が向けられ、白眼視されやすい傾向があります。(「はじめに」より)

大切なのは彼らが抱える困難を理解し、「加害者家族も支援を必要とする存在である」という認識が広まることだ。私たちはともすれば、加害者の家族というだけで犯罪者扱いしてしまう。しかし気持ちを落ち着けて、冷静に考えてみる必要があるのだ。それはきっと無駄ではない。

そのため本書において著者は、加害者家族の置かれた実態(それは「生き地獄」とも表現できるようだ)、支援の現場、加害者家族を追い詰める「世間」や社会の問題にも着目しているのである。

具体的な事例も多く、なかには「えっ、そんなことがあるの?」と思いたくなるようなものもある。そのひとつが「妊娠中に夫が盗撮で逮捕」という項目で明らかにされている話だ。

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