最新記事
ウクライナ情勢

ウクライナを守るのは「誰」か?――揺らぐ安全保障と「安心部隊」の実態とは

Security Delusions

2025年9月2日(火)17時15分
クリスチャン・カリル(元本誌米国版モスクワ支局長)
ウクライナのゼレンスキー大統領と欧州首脳らが会議で議論する様子

ウクライナ支持で結束しているヨーロッパ諸国だが、ウクライナに平和維持部隊を派遣する話は急速にしぼみつつある(2025年5月、アルバニア) STEFFEN KUGLERーBUNDESREGIERUNGーHANDOUTーREUTERS

<本当にウクライナを守るのは誰なのか。欧州は派遣に消極的、アメリカは揺れ動き、ロシアは「安全保障」にまで口を出す。先行きは依然として見えない>

最初に、さほど遠くない昔を振り返ってみよう。NATOは1999年、ユーゴスラビアで78日間だけ戦争をした。ユーゴの構成国であるセルビアのコソボ自治州で起きた、セルビアによる血なまぐさい民族浄化を阻止するためだ。

最終的にセルビア軍は撤退し、入れ替わりにNATO主導の平和維持部隊がやって来た。約5万人の兵士が、ベルギーの3分の1程度の面積しかないコソボの防衛に当たることになった。あれから26年たった今も、約4500人の兵士がコソボに駐留している。


では、現在のウクライナに目を向けよう。国土はコソボの55倍の広さがある。

8月半ばにアラスカで開かれた米ロ首脳会談をきっかけに、ウクライナ戦争に終止符を打つための交渉では、「安全の保証」という概念が大きな焦点となってきた。ところが、それが意味するところは国によって大きく異なる。

だが、ここでいう安全の保証とは、ウクライナに安全保障を提供すること、もっと言えば、ウクライナを新たなロシアの侵略から守ることであるべきだ。

「保証」と書かれた合意書を作るだけでは、なんの役にも立たない。それは既に実証済みだ。

キャリア
AI時代の転職こそ「人」の力を──テクノロジーと専門性を備えたLHHのコンサルティング
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

11.5兆ドル規模の投資家団体、食品大手にタンパク

ビジネス

BNPパリバ、第3四半期利益は予想未達 統合費用と

ビジネス

日経平均は3日ぶり反落、前日高後の利益確定売りが優

ワールド

BAT、米で未承認電子たばこ試験販売中止 FDAが
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下になっていた...「脳が壊れた」説に専門家の見解は?
  • 4
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 5
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 6
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 7
    中国のレアアース輸出規制の発動控え、大慌てになっ…
  • 8
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 9
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中