壊れにくいチップ工場、壊れやすい国際秩序――台湾半導体はどこまで耐えられるか【note限定公開記事】
TIGHT TIMES FOR TSMC

TSMCは中国にも生産拠点を置く一方、米アリゾナ州の工場(写真)への投資を拡大 TAIWAN SEMICONDUCTOR MANUFACTURING CO., LTD.
<地震や台風には備えた。だが米関税と中国の有事リスク、米中のせめぎ合いは別の難題だ。TSMCと台湾半導体の現在地を読み解く>
▼目次
1.耐震は万全、有事リスクと米関税が泣き所
2.TSMCの分散はリスク回避になるのか?
3.台湾半導体が「耐える条件」とは
1.耐震は万全、有事リスクと米関税が泣き所
台湾の半導体産業はこれまで幾度となく「災害」に脅かされてきた。
地質学的に活動が活発な地帯にある台湾はたびたび大地震に見舞われ、台風もよく襲来する。だがその分、半導体産業は防備を固めてきた。
地震の揺れを吸収・抑制する振り子式免震装置を工場に設置し、設備は耐震アンカーで固定している。台風襲来時のための詳細な行動マニュアルもある。
おかげで、どれほど強大な自然の力が襲いかかっても生産ラインが大混乱に陥る事態を免れてきた。
しかし、最近では地政学上のリスクが膨らんでいる。新たに出現した地政学的脅威を克服するのは、天災の場合よりはるかに複雑だ。
とりわけ危惧される「地政学的な断層」は、中国がこの数年間、台湾付近で実施している軍事演習や台湾関連の発言から明らかだ。
戦争が現実になったら、台湾の半導体産業が壊滅するのはほぼ間違いない。その結果、電子機器製造が国際的に停止し、世界規模の混乱が起きるだろう。
アメリカは台湾有事を警告する一方で、台湾への圧力を強めている。
ドナルド・トランプ米大統領は、台湾がアメリカから半導体産業を奪っていると非難し、高い関税を課す可能性をちらつかせる。
台湾の半導体企業だけでなく、緊密な協力関係にある米企業も打撃を受けかねない。米政権の方針は同時に、台湾にとって中国の侵攻に対する最大の防衛策である米台の安全保障関係も脅かす。
2.TSMCの分散はリスク回避になるのか?
危うい状況の中、主要経済国は半導体製造を近隣国に移転することを呼びかけている。とはいえ、台湾企業もぼんやりしてはいない。
【note限定公開記事】壊れにくいチップ工場、壊れやすい国際秩序――台湾半導体はどこまで耐えられるか
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