大戦の火種?中ロにもやらない懲罰関税をインドに叩きつけるトランプ外交
What Is Trump's Problem With India?
トランプ政権は、インドに対してアメリカの貿易相手国の中でも特に厳しい関税を課している。インド製品に対する関税率は、8月27日から、現在の25%からさらに引き上げられて50%になる予定だ。
インドは保護主義的とも言われるが、実際の平均関税率は5%未満で、1990年の56%から大幅に低下している。多くの新興国と同様、経済発展につれて貿易障壁は低下する傾向にある。トランプが、貿易政策で他国を威圧することが当然の権利であるかのように振る舞っているのも不可解だ。
インドに対する高関税措置について、トランプはロシア産の原油を買い続けていることに対する「懲罰的なもの」だと述べている。スコット・ベッセント財務長官は、インドはロシアの原油を買い、それを精製し高く売ることで「暴利を得ている」と批判した。
確かにロシアから原油を買うのは西側にとって好ましいことではない。だが、インドがロシアから原油を大量に購入するのは、経済制裁下で価格が大幅に割引されているからだ。市場原理に基づいた合理的な取引ともいえる。「(戦争に便乗した)裁定取引」を非難するベッセント自身、ヘッジファンド時代にはその手法で莫大な利益を上げたはずだ。