トランプが中国に仕掛ける貿易戦争は「自滅的」...この戦争の勝者が中国になる納得の理由
CHINA’S LONG GAME
対してトランプ政権は、おそらく意図せずして自国産業の(とりわけレアアースなどの代替困難な資源における)対中依存の深さを露呈してしまった。トランプ関税による米中貿易の混乱で、アメリカの製造業は素材や部品の確保に追われ、調達コストが膨らんでいる。中国が4月に導入したレアアースの厳格な輸出規制も、米企業に痛みを与える強力な手段となった。
中国から見れば、経済のデカップリング(分離)を強引に進めるトランプ政権の姿勢は、中国の台頭に抵抗する悪あがきにほかならない。アメリカが自滅的ともいえる貿易戦争を仕掛けてくるなら、中国は受けて立つ。トランプに屈するくらいなら、デカップリングもやむを得ない。
だからこそ中国の指導部も産業界もレジリエンス(回復力)と自立性の構築に、すなわちアメリカの市場と技術への依存を減らすことに注力している。今の中国企業はアメリカ市場での公正な競争も先端技術へのアクセスも不可能に近いと見なし、それを前提として動いている。中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)がアメリカの制裁を受けながらも見せつけた驚異的な復活劇は、レジリエンスの見事な成功例といえよう。
もちろん高率関税は痛手だ。とりわけ衣料品などの軽工業部門には打撃となるだろう。しかし結果として競争力のない企業が淘汰されれば、業界全体の生産性は上がる。つまり、中国にとって悪い話ではない。