トランプが中国に仕掛ける貿易戦争は「自滅的」...この戦争の勝者が中国になる納得の理由
CHINA’S LONG GAME
短期的に失業率は上がるだろうが、大した政治的影響はなさそうだ。そもそも中国側には、もっと過酷な時期を乗り越えてきたという自負がある。市場経済への急速な移行が進められた1992~2002年には7600万人以上が職を失っている。当時の状況を考えれば、トランプ関税の影響で失業者が増えたくらいで中国共産党の支配力が揺らぐ可能性は極めて低い。
一方で中国共産党の指導部(工学系の出身者が多い)と産業界は先進技術(とりわけAIを活用した高度に自動化された製造業のエコシステムづくり)への投資を加速している。生産性の伸びが止まれば党の威信に傷が付くからだ。18年にトランプが貿易戦争を仕掛け、その対抗策として打ち出されたのが先端技術の急速な国産化だ。国産技術だけで勝てる保証はないが、トランプのアメリカが攻めてくる限り、中国側も引くわけにいかない。
ゾーイ・リウ
ZOE LIU
外交問題評議会(CFR)中国研究上級研究員。コロンビア大学国際公共政策大学院の非常勤助教を務め、国際政治や金融など幅広く研究。著書に『BRICSは世界金融システムからドルを排除できるか?』など。

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