最新記事
アメリカ政治

トランプ税制改革の「壊滅的影響」...富裕層への減税で医療保険と地方経済が危機に

2025年7月7日(月)18時00分
ニック・モルドワネク(本誌記者)

富裕層のために低所得者のセーフティーネットに手を付ける?

同法の柱となる減税(主な対象は富裕層)の費用を捻出するためには、何かを削減する必要があったと、ピッツバーグ大学のミランダ・ヤバー助教(保健政策・管理学)は指摘する。そして共和党は例によってセーフティーネットに目を付けた。

「アメリカ人の5人に1人がメディケイドに医療保険を、7人に1人が補助的栄養支援プログラム(SNAP、旧フードスタンプ)に食料確保を頼っている。削減すれば壊滅的な影響が出るはずだ」


公衆衛生政策関連の情報を発信するカイザー家族財団によると、メディケイド受給者の約92%は既に就労中か、就労免除の対象だ。しかし、問題は就労時間ではなく、就労状況や免除を証明する行政手続きの負担だと、ヤバーは言う。「この要件は『就労要件』というより『書類要件』だ」

ウィリアム・アンド・メアリー大学(バージニア州)のクリス・ハワード教授(政府・公共政策)は、メディケイドとオバマケアの削減は州レベルで「深刻な影響を及ぼす」と本誌に語った。医療保険を失うのは全米で数百万人、地元バージニア州でも約30万人と推定されている。「要するに、共和党は(オバマケアの)主要部分を代替策なしに弱体化しようとしている」

オバマケアの下でメディケイドの対象を拡大したバージニア州やケンタッキー州など、最も打撃を受ける州の農村地域では、メディケイドに依存する人々を対象とする連邦政府の補助金が減額される。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、習主席に哀悼の意 香港大規模火災巡

ワールド

米銃撃事件の容疑者、アフガンでCIAに協力か 移民

ワールド

ゼレンスキー氏、平和と引き換えに領土放棄せず─側近

ワールド

米ウ代表団、今週会合 和平の枠組み取りまとめ=ゼレ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 9
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 10
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中