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職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳女性、会社が裁判でとんでもない主張を...

2025年7月2日(水)11時25分
印南敦史(作家、書評家)

「悪いのは加害者、なぜ辞めなければならないの」

しかもこの会社はそうした状況を放置するだけでなく、のちに裁判所に提出された文書では、綾奈さんは「仕事が遅く、多々ミスするので、口調が強くなる事もあったようですが、業務向上の為であり故伊佐間綾菜さん(ママ)一人特定に対してではない」と開き直ったという。

私も学生時代のバイト先で、「この業界はみんな気が荒いし、今は繁忙期だから怒鳴られるのはむしろ当たり前だ」というようなことを言われた経験があるが、当然ながらそういう問題ではない。気が荒いから怒鳴ってよい業界などあるはずがない。

綾奈さんは入社3年後に企画開発部に配置転換になるが、以前とは仕事内容が異なるため業務を進めるのに時間がかかった。残業時間も月20時間以上増え、1カ月あたり45時間を超えていたという。

そして、そんな状況下でも従来のようないじめが続いたため、精神的に追い詰められていった。母親は会社を辞めることを勧めたが、「悪いのはハラスメント加害者なのに、なぜ辞めなければいけないの」と話して働き続けたという。

家族は職場に問題があると思ってはいたものの、誰が加害者で、どのようなことをしているかなど、ハラスメントやいじめの具体的な内容までは把握していなかった。被害に遭っている本人が進んでその状況を話すことは少ないのだから当然だ。


 そのような中、休日だったにもかかわらずハラスメント加害者からの業務に関する電話を受けた日の翌朝、2012年6月12日に、綾奈さんは自宅マンションから飛び降りた。亡くなった当時は21歳で、入社してわずか3年後の出来事であった。(38ページより)

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