「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波、独身を選択した世界の若者は何を思う

A SINKING FEELING

2025年6月12日(木)17時20分
アリス・コリンズ(本誌記者)

巨額投資より価値観の転換

国連によれば、出生率が人口置換水準を下回る国の62%が何らかの少子化対策を導入している。出産奨励金や育児手当、育児休暇の拡充、税制優遇、柔軟な勤務体制などだ。アメリカの連邦議会上院では、政府職員に対する体外受精費用の補助や月々の子育て支援金給付、育児費用の公的負担なども議論されている。

だが保守系シンクタンク「ケイトー研究所」によれば、こうした政策を導入した国々でも出生率の改善は微々たるものだ。


子育て世帯への現金支給にはバウズマンも疑問を呈し、むしろ出産をためらわせる経済的バリアを取り除くことが先決だと考える。「子育てには金がかかるという思い込み、あるいはそういう現実を取り除いてやる。そうすれば少子化に歯止めをかけられるのではないか」。バウズマンは本誌にそう語った。

対してバーブルッゲンは、もはや政策で対応できる状況ではないとみる。彼に言わせると、いま必要なのは「子育ては素晴らしいと思えるような文化的転換」だ。効果の期待できない政策に巨費を投じるより、文化を変えろということだ。

もちろん、そうした価値観の転換が容易でないことは承知の上だ。それでもほかに方法がない。

「みんなが行動を変えない限り、この問題は解決できない」とバーブルッゲンは力説する。「子供を育てなければ社会の未来はない。子育てという人間にとって不可欠の経験を放棄してはいけない。そんなことをすれば私たちの社会は縮んでいき、やがて消滅してしまう」

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