最新記事
荒川河畔の「原住民」(28)

「スマホはある」「四季を体験したい」新人ホームレスが最も不便に思うことは?

2025年4月26日(土)18時45分
文・写真:趙海成

荒川沿岸の景色荒川沿岸の景色

荒川沿岸の景色は美しく、休日に運動や遊ぶのに良い場所だ

荒川の河川敷では、毎年数回、さまざまな規模のマラソン大会も開催される。その度に多くの参加選手やその家族、ボランティアなどが集まる。大会の主催者も参加者も、現場にホームレスが現れることを望んではいないだろう。

ホームレスたち自身も、そのように思い、自分のテントに引きこもるか、早朝のうちにどこか別の場所に逃げてしまうこともある。

客観的に言えば、野球の練習をするにしても、さまざまな大会を開催するにしても、人々はこの公有地を合理的かつ合法的に使用している。

一方でここに住んでいるホームレスたちは、この公有地の「不法占有者」とされており、その立場が弱いのは当然だろう。

荒川の河畔に住んでいるホームレスは皆、国土交通省の事務所から「警告」と書かれた紙を受け取っている。

そこにはこのように書かれている。


 あなたが住居としているこの場所は、国土交通省が管理している河川区域です。

 この場所を住居とすることは、
1. 国有地の不法占用などにあたり、河川法に違反します。
2. 洪水時においては、小屋およびゴミなどが流失し、河川に支障を及ぼす恐れがあります。
3. 火気を使用することにより、堤防や橋などに悪影響を与えるほか、火災を発生させる恐れもあります。

 よって、上記の理由により河川管理上および環境上の支障となっています。
 また、洪水などの災害には、ここで生活する者の生命にも危険を及ぼすため、すみやかに河川区域外へ退去するとともに小屋などを撤去するよう警告します。

私に言わせれば、厳しさと優しさが同居するような文書だが、この「警告」の存在はホームレスのみなさんが覚えておいたほうがいい。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ゴールドマン、アジア投資銀行事業再編でシェア拡大目

ビジネス

中国、デジタル元の国際利用促進へ 多極通貨システム

ワールド

シンガポール成長率予想下振れ、追加緩和実施へ=MA

ワールド

タイ輸出、5月は前年比+18.4% 関税交渉期限に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 3
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火...世界遺産の火山がもたらした被害は?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 6
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 7
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    【クイズ】「熱中症」は英語で何という?
  • 10
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中