最新記事
少子化

日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか

2025年4月23日(水)11時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
在宅勤務の母親と子ども

毎日へとへとになっている母親の姿を目にすれば、女子の結婚・出産願望は萎えてしまう photoAC

<夫婦共働きの家庭でも、日本や韓国では結局女性への家事の負担の偏りが大きい>

未婚化・少子化が止まらない。若者の経済状況の悪化が指摘されることが多いが、それだけならまだ救いはある。減税、奨学金返済免除といった政策により、事態が好転すると考えられるからだ。

しかしそれ以前の問題として、子どもが欲しいという意識そのものが萎えてしまっている可能性もある。10代の早いうちからだ。こども家庭庁が2023年に実施した「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」では、「将来、子どもは何人欲しいか」と尋ねている。「子どもは欲しくない」と答えた10代の割合は、日本が14.6%、アメリカが14.5%、ドイツが11.5%、フランスが8.9%、スウェーデンが5.6%。日本が最も高い。

さらに細かく見ると、日本では性別による違いが大きいことも分かる。男子と女子に分けて「子どもは欲しくない」の回答割合を棒グラフで表現すると<図1>のようになる。

newsweekjp20250423015315-3d42cc5971331ac73207ff3c0df1f4ebd94c4212.png


日本では男女の差が大きい。男子は7.0%なのに対し女子は16.2%と、倍以上の開きがある。他国とは違う、日本の特徴だ。割合の絶対水準はそう大きくはないが、グラフがこのような形になることに、日本社会の「ジェンダー観」が透けて見える。

日本では「男は仕事、女は家庭」の性役割分業が根強く、家事や育児の負担は女性に偏っている。フルタイムの共稼ぎ夫婦であっても、だ。最近はフルタイムで働く母親も増えているが、毎日へとへとになっている母の姿を目にしたら、女子生徒の結婚・出産願望も萎えてくるというものだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 8
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 9
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 10
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中