ノーベル経済学者すら「愚挙」と断じるトランプ関税...トランプは何を勘違いしている?

ABSURD TARIFFS WILL BACKFIRE

2025年4月11日(金)12時50分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

newsweekjp20250410012530-d3e66daf64dda74da5357a6ca479799ef54593ac.jpg

マッキンリーを医師に見立て彼が万能薬「関税」を自慢げに掲げる姿を描いた風刺画 PHOTO12ーUNIVERSAL IMAGES GROUP/GETTY IMAGES

「エコノミストは腰を抜かすよ」とスティグリッツは言った。「ばかげている。21世紀の今は通信や教育、金融などのサービス貿易がGDPの20%を占め、製造業は10%にすぎない。なのにサービス部門を除外しているのだから」

貿易政策の一手段としての関税を支持する経済政策研究所のアダム・ハーシュも手厳しい。「国家元首が犯した最悪の経済政策の過ちとして歴史に残る。あまりにも軽率で無謀で、ただ啞然とする」


悲しいことに、トランプは大切なことを見逃している。賢明にして戦略的な通商政策(つまり対象国の的を絞って関税を課し、その他の経済制裁もちらつかせる手法)であれば諸外国に対米投資を促し、アメリカの雇用を創出でき、トランプの望みをかなえられるという点だ。

実例がある。何十年も前に、いわゆる「日本株式会社」の壁をこじ開けた例だ。1980年代から90年代にかけて、アメリカは共和党政権でも民主党政権でも日本に強烈な圧力をかけ、急激な円高を演出した。この「ガイアツ(外圧)」で日本経済は構造改革を余儀なくされ、日本の大企業は相次いで製造拠点をアメリカに移すことになった。

結果、今では多くのアメリカ人が日本企業を「彼ら」ではなく「われわれ」の仲間と見なしている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

USスチール工場で爆発、2人死亡・10人負傷

ビジネス

メルセデスCEO、EU2035年排ガス車規制の現実

ワールド

ブラジル大統領、中国主席と電話会談 BRICSの役

ワールド

トランプ氏、労働統計局長に保守系シンクタンクのエコ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 2
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トラ…
  • 7
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 8
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 9
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 10
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中