米国覇権の終焉...勢力均衡の時代か、新たな混沌の幕開けか?
The New Meaning of “Munich”
さらに、トランプは国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で逮捕状が出ているロシアのウラジーミル・プーチン大統領をG8に再び招待したいとまで主張している。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、サウジアラビアでの米ロ協議から締め出されたことに不満を表明した。だがトランプは戦争が始まった責任はゼレンスキーにあると非難。その上、最大の友好相手であるEU諸国に新たな関税戦争を仕掛けようとしている。
ただし、一連の動きに驚きはない。トランプの「MAGA(アメリカを再び偉大に)」運動は数カ月、いや数年にわたり方向転換をほのめかしてきた。また第2次大戦以降80年間にわたり民主・共和両党が支持してきた米国主導の国際秩序は、トランプが「自由世界のリーダーの座に興味がない」と示唆する前から既に崩壊の兆しを見せていた。
それでも主要な同盟国を敵視し、独裁的な敵国をパートナー扱いすることで、トランプは安定していた世界秩序に決定的な一撃を加えたのかもしれない。ミュンヘン会議に参加した米ジョージタウン大学のチャールズ・カプチャン教授は「ミュンヘンの雰囲気は葬式のようだった」と言う。
米国主導の国際秩序の解体がどこまで進むかはまだ分からない。だがトランプは就任からわずか1カ月で、予想をはるかに上回るダメージをもたらしているように見える。