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米国覇権の終焉...勢力均衡の時代か、新たな混沌の幕開けか?

The New Meaning of “Munich”

2025年2月26日(水)13時00分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

バンスはバレンタインデーにミュンヘンで行った演説で、言論の自由を表面的に擁護しながらも、欧州政界を席巻する極右勢力を露骨に支持した。そこに込められたメッセージは、欧州への愛がないことだけではなかった。バンスの若さを考えれば、彼の考え方が長期にわたって権力を持ち続ける可能性があるというメッセージも伝わってきた。

つまり、アメリカは「78歳のペテン師」に一時的に乗っ取られているが、いずれは表舞台から去るという欧州の期待はもはや通用しない。バンスはまだ40歳で、ネオ孤立主義のアメリカファースト運動の後継者と目されている。


そして、トランプ同様、バンスや彼を支持するMAGA勢力も「左傾化しすぎた欧州」への愛情は持ち合わせていない。バンスはナチスが設置したダッハウ強制収容所跡を訪れた翌日に、ネオナチとの関係を公言するドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と会談した。歴史的な皮肉など意に介する気配もなく──。

国内支持層へのアピール

この事実は米欧の協調時代の真の終焉を示唆しているのかもしれない。ちなみにバンスが上院議員だった1年前にミュンヘン会議で行った演説の題目は「欧州は防衛において自立すべきだ」だった。

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