最新記事
荒川河畔の「原住民」(16)

ホームレスはどうやって「ホームレスになる」のか。誰であろうと、その可能性はある

2024年12月21日(土)15時05分
文・写真:趙海成

彼には、全財産を盗まれた後、首を吊って自殺した友人がいた。いま自分は同じ窮地に立たされている、どうすればいいのか――。結局、彼は借りていた家に戻らず、仕事の取引先との連絡も途絶え、荒川河川敷で野宿生活を始めることになった。

体が弱くて労働ができず、ホームレスを選ぶ人もいる

私が荒川河川敷で会ったホームレスの1人は、病気がきっかけだった。

中高生の頃は不自由のない生活を送っていたが、学業は疎かだった。歌が好きだったので商店街のカラオケ大会に出たり、刺激が欲しくて車を飛ばし、警察に追いかけられたりしたこともあった。たばこも吸ったし、酒も飲んだ。高校を中退し、働いてお金を稼がなければならなくなると、まず専門学校の食堂に就職し、皿洗いや掃除をした。

しかし、幼い頃から喘息を患っていて、8時間連続で働くことができなかった。その仕事を辞め、派遣会社に登録した。毎日働く必要はないが、彼に与えられた仕事の多くは建設現場の肉体労働だった。

しばらく経つと、体が悲鳴を上げるようになったそうだ。仕事中、喘息がよく出て、休まなければならなかった。加えて彼はヘビースモーカーで、たばこをたくさん吸うのだが、そのたびに喘息がひどくなり、正常に仕事ができなくなった。

そして彼は、生きていくにはホームレスになるしかないと考えた。この時まだ32歳だったという。

もちろん、彼も公的な支援をあおいだり、他の道を選んだりすることができたかもしれない。しかし、若くても体が弱くて普通の人のように労働ができない人にとっては、ホームレスになることが現実味を増してしまうのだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ベラルーシ大統領、米との関係修復に意欲 ロシアとの

ビジネス

ECBが金利据え置き、4会合連続 インフレ見通し一

ワールド

ロシア中銀、欧州の銀行も提訴の構え 凍結資産利用を

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 8
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 9
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中