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荒川河畔の「原住民」(16)

ホームレスはどうやって「ホームレスになる」のか。誰であろうと、その可能性はある

2024年12月21日(土)15時05分
文・写真:趙海成

ホームレスは一人ひとり異なる事情とストーリーを抱えているが、それぞれがホームレスになった理由を知れば、きっと「誰であれ、いつかホームレスになる可能性がある」という真理が実感できる。

落とし穴はどこに潜んでいるか分からない。4つの例を紹介しよう。

一夜にしてホームレスになる可能性もある

当時、建築現場の下請け仕事をしていた彼は、何人かの作業員を連れて埼玉県某所の現場に行った。最終日の夕方に請け負った仕事が完成し、その夜、工事現場の寮から退去するよう言われた。疲れていたが、手に入れたばかりの数十万円の工賃を見て心が浮き立っていたという。

まず東京に戻るが、深夜になるのでみんなでホテルに泊まり、翌朝、電車やバスでそれぞれ家に帰るというプランだった。

泊まったのは池袋のカプセルホテルだ。まず貴重品をホテルの鍵付きロッカーに入れて、お風呂に入り、それからカプセルに入ってぐっすり寝た。この夜、災厄が降りかかった。翌朝そのロッカーを開けたところ、中にあった数十万円の現金とたくさんの免許証が全部消えていた。

警察によれば、密航してきた不法滞在の外国人がやったのだろうという。この連中はあちこちで犯罪を犯しており、当時、社会問題になっていた。捕まえるのは難しい。

最も痛かったのは、建築工事に関する各種の免許証や許可証で、大型トラックやクレーン運転、溶接関係、建築施工管理士資格など、すべてを失ってしまったと彼は話す。

これらを再発行してもらうにも、時間とお金がかかる。手元には、仕事の関係者に公衆電話をかけるお金さえない。生きる道をすべて断ち切られたように感じたそうだ。

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