最新記事
日本政治

岸田続投を占う日本政治における2つの「サバイバル指標」と2つの「起死回生策」

Can Kishida Hold On?

2024年8月6日(火)20時20分
シャムシャド・A・カーン(ビルラ技術科学大学ピラニ校助教)
岸田続投を占う日本政治における2つの「サバイバル指標」と2つの「起死回生策」

外交面では大きな成果を上げてきた岸田首相だが、内閣支持率は低迷を続ける RODRIGO REYES MARINーPOOLーREUTERS

<岸田が総裁再選への意欲を見せても世論の評価は厳しく、党内ではトップ交代を求める声がやまない。しかし、岸田には雌伏の時を経て首相の座に就いた持ち前の忍耐強さがある>

このところ日本政治のウオッチャーが注視しているのは今年秋に実施される与党・自由民主党の総裁選の行方だ。日本では戦後政治の慣習で、与党の総裁が国会で内閣総理大臣に指名されることになっている。

岸田文雄首相の自民党総裁としての1期目の任期(3年)は今年9月に満了を迎える。岸田は党総裁、ひいては首相の座にとどまれるのか。


現職の首相が続投できるかどうかを占う日本政治のサバイバル指標が2つある。

内閣の支持率と「青木の法則」だ。

日本では内閣支持率が30%を切ると危険水域とされ、与党内で現職降ろしの声が高まる。

一方、青木の法則は、1999〜2000年に内閣官房長官を務めた故青木幹雄が提唱した説で、内閣の支持率と与党の支持率の合計が50ポイントを切ると、政権運営が難しくなる、というものだ。

これに対し「世論調査だけで政治が動いていいのか」と異議を唱えた政治家がいる。

失言やスキャンダルで辞任に追い込まれた森喜朗元首相だ。岸田内閣の支持率もかつての森政権と同程度の低水準で推移しており、森のように国民の声を軽視してはいけないと、メディアが警告している。

実際、2つの指標は岸田の続投が危ういことを示している。今年6月の朝日新聞の世論調査では内閣支持率は19%で自民党の支持率(24%)との合計が50ポイントを下回っていた。

7月には内閣支持率は多少持ち直して26%になったが、30%に届かない低空飛行に変わりはない。自民党の支持率は前月とほぼ同じ24%にとどまり、合計でようやく50ポイントに届いたものの、引き続き際どい水準にある。

耐え抜いて野望を実現

だが岸田は支持率の低さにひるまず、続投に意欲的だ。

首相としての在職期間は既に1000日を超え、戦後の首相では歴代8位の長さを記録している。6月末には「引き続き、道半ばの課題に結果を出すよう努力する」と語ったと朝日新聞が伝えた。

このコメントは党内でじわじわ高まる「岸田降ろし」の声をものともせず、総裁選で勝利を目指す意思表示と解釈できる。

なぜ岸田はこの状況で続投を目指すのか。

答えは雌伏の時を経て首相の座に就いた持ち前の忍耐強さにある。それが政治家としての岸田の特質であり、それを武器に自民党の派閥政治を生き抜いてきた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

過度な為替変動に警戒、リスク監視が重要=加藤財務相

ワールド

アングル:ベトナムで対中感情が軟化、SNSの影響強

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅

ワールド

中国により厳格な姿勢を、米財務長官がIMFと世銀に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 2
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 5
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 6
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 7
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 8
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 9
    ビーチを楽しむ観光客のもとにサメの大群...ショッキ…
  • 10
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中