最新記事
パリ五輪

パリ五輪、保守派を激怒させた「最後の晩餐」は称賛に値する

Pastors Counter Conservative Fury Over Olympics 'Last Supper' Performance

2024年7月29日(月)22時38分
マンディ・タヘリ

だが、少なくとも2人のキリスト教指導者が、この場面は「最後の晩餐」を描いたものだという主張に反論している。たとえば、アトランタのキャッシー・ノーランド・ラプコ牧師は27日、フェイスブックでこう投稿した。「あれはディオニュソスの饗宴だ。ギリシャ神話の祝祭と饗宴、儀式と演劇の神だ。オリンピックはギリシャの文化と伝統から生まれた。フランス文化も、祝宴や祝祭、舞台芸術に深く根ざしている」

ラプコの投稿はフェイスブックで5000回近く共有され、Xでもそのスクリーンショットが広く出回っている。

ラプコは28日に本誌の電子メールよる質問に回答し、「あの開会式の場面のイメージが『最後の晩餐』か否かをめぐる議論は、イエス・キリストが社会システムよりも人々を優先させたという大局的見地を見失っている。常に人間が最優先だ」。

「芸術は、あまり馴染みのない文化に出会うための素晴らしい方法だ。芸術には美を際立たせ、社会批評を提供し、対話を生み出す力がある」とも付け加えた。

「分裂を煽るのではなく、キリスト教のシンボルがどのような文化圏でどのように描かれているかに関心を持つことで、キリストが私たちに呼びかけたように、夜、空腹のまま眠りにつく子供たち、家がなく路上で眠る人々、抑圧の影で迷う人々など、他者への配慮をもって生きることにつながるのを期待したい」とラプコは語った。

多様性のメッセージ

ベンジャミン・クレーマー牧師は、この場面が「最後の晩餐」ではないことを示唆するスレッドに、ラプコのXへの投稿をリポストした。

28日の朝、彼はXにこう書き込んだ。「芸術的表現が、私たちにとって実存的な脅威であるかのように振る舞うとき、私たちクリスチャンは、自分たちの信仰がどれほど脆く見えるかを理解していないと思う。私たちは、クリスチャンが愛と理解ではなく、恐怖と猜疑心で支配することを自らに許してしまっている」。

開会式の芸術監督を務めたトーマス・ジョリーは式典の後、AP通信にこう語った。「私の願いは、破壊的になることでも、嘲笑うことでも、ショックを与えることでもない。何よりも、分断ではなく、愛のメッセージ、多様性を受け入れるメッセージを送りたかった」

今回の開会式は、最もLGBTQ+に配慮したオリンピックのセレモニーのひとつとして称賛されている。

パリ五輪の公式Xページでは、このシーンの写真を掲載し、「ギリシャ神話の神ディオニュソスの解釈は、人間同士の暴力の不条理さを私たちに認識させる」と説明している。ディオニュソスはギリシャ神話に登場する神で、ワイン醸造、豊穣、祝祭を司る。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ボーイング幹部、エア・インディア本社訪問 墜落事故

ビジネス

ソフトバンクG、Tモバイル株売却で48億ドル調達=

ワールド

ロシア、ウクライナ首都にドローン・ミサイル攻撃 1

ワールド

インド、年末までにEUと貿易協定締結の見通し=モデ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染みだが、彼らは代わりにどの絵文字を使っている?
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 7
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 8
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 9
    「そっと触れただけなのに...」客席乗務員から「辱め…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中