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サンゴ×「ハチの巣」でハリケーンに勝つ!? 米国防総省も注目の「護岸プロジェクト」とは

Reef Rehab

2024年7月24日(水)15時31分
ジェフ・ヤング

マイアミ大学のディエゴ・リアマン准教授

シーハイブの計画に携わるリアマン DIANA UDEL/COURTESY OF THE UNIVERSITY OF MIAMI ROSENSTIEL SCHOOL

暑さに強いサンゴを選別

この夏の問題はもはや、白化現象が起きるか起きないかではない、とリアマンは深刻な表情で語った。「どこまで深刻なものになるかだ」

フロリダ州南部は、アメリカ国内でも最も気候変動の影響を受けやすい場所と言っていいだろう。マイアミなどの沿岸の町は気温と海水面の上昇、そして以前よりも強い暴風雨に悩まされている。


周辺海域のサンゴ礁は、暴風雨による被害や沿岸の土地の浸食を和らげてくれるはずの存在だ。だが、サンゴ礁も気候変動に脅かされている。

「(周辺の海の)サンゴ礁の姿は見る影もなくなった。特に2023年の大規模な白化現象で、フロリダ沿岸各地のサンゴが死に絶えてしまって以降はなおさらだ」と、リアマンは言う。「サンゴがなくなると、(サンゴ礁は)形を失う。形を成していなければ波を弱める効果は望めない」

リアマンらは、サンゴが高温の海水でも生きられるよう、ひいては海辺の町並みを守る力を維持できるよう、研究を続けている。

サンゴの保護活動

HANNAH HEATH/COURTESY OF THE UNIVERSITY OF MIAMI ROSENSTIEL SCHOOL

「以前は白化現象が毎年続いて起きるとは考えていなかった」と、リアマンは言う。だが海水温が高い状態が続き、フロリダ州南部では本格的な夏が到来するかなり前から気温が上昇。リアマンの研究室では今年もサンゴの救出作戦の準備を急いでいる。

昨年の夏の海水温は過去最高水準で、専門家によればフロリダ州では史上最も広範囲でサンゴの白化現象が起きた。そこで、希少で重要なサンゴを急いで移動させる措置が取られた。海中のサンゴの養殖場から陸上の水槽へと移したケースもある。

「むちゃなやり方だと思うだろうが」と、リアマンは言った。「種の、もしくは特定の遺伝子型の最後の生き残りを救い出すには、専門家を送り込む必要がある」

海水温の上昇は、高温に耐える力や白化からの回復力を持つ種を洗い出す機会でもある。リアマンの研究室では、高温に強い種の選別や遺伝子技術により、白化が起こる状況でも生き残る確率の高いサンゴを生み出そうとしている。

「わざわざ次に犠牲となるサンゴを海に植えに行くのではなく、育てる種類を選別するということだ」

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