最新記事
最高裁判決

トランプが免責ならウォーターゲート事件も「チャラ」だった──元ニクソン法律顧問

Did the Supreme Court Just Make Watergate Legal? Immunity Ruling Explained

2024年7月3日(水)18時05分
ショーン・オドリスコル
ドナルド・トランプ

2020年の議事堂乱入など自分が起訴された事件について「免責特権」を主張してきたトランプの願いが叶った(6月28日、バージニア州チェサピークの選挙集会で) REUTERS/Brendan McDermid

<「唖然とした」と、ニクソン元大統領の法律顧問だった弁護士が言うほど、今度の最高裁判決は「トランプ寄り」だった>

米連邦最高裁の大統領免責に関する新しい判決に従えば、ウォーターゲート事件で悪名高いリチャード・ニクソン元大統領も罪に問われることはなく、辞任する必要もなかっただろう、と一部の専門家は主張する。

【写真特集】ポルノ女優から受付嬢まで、トランプの性スキャンダルを告発した美女たち

ニクソンの法律顧問を務めた弁護士ジョン・ディーンは、ウォーターゲート事件当時の最高裁が今と同じ考えだったら、ニクソンは政治生命を絶たれることもなかっただろう、と語った。ニューヨーク大学法科大学院のピーター・シェーン教授も同意する。

両者が問題視しているのは、最高裁が下した7月1日の判決だ。

共和党の大統領候補指名争いの最有力候補ドナルド・トランプ前大統領は、2021年1月6日の連邦議会議事堂で起きた暴動を招いた反乱扇動など、前回の大統領選の結果を覆そうとした4つの容疑で刑事訴追されている。だが最高裁は、在職中の公的な行為についてはほとんど何をしても罪は問われないという幅広い「免責特権」を認めたのだ。トランプが求めていた通りの判決だ。

判決に「唖然とした」

ウォーターゲート事件は1972年、共和党の工作員が大統領選挙で民主党の候補に不利な情報を得るために、ワシントンのウォーターゲートホテルにあった民主党本部の事務所に侵入し、逮捕されたことから始まった。

ワシントン・ポスト紙の調査により、当時のニクソン大統領は秘密の支払いルートを通じてこの工作員とつながっていたことがわかった。事件の解明に関して、当時FBIの副長官だったマーク・フェルト(事件の渦中では匿名で「ディープ・スロート」と呼ばれていた)が密かにポスト紙の記者に協力していたことが後に判明した。

ニクソンは議会上院で弾劾されそうになり、1974年に大統領を辞任した。後任としてジェラルド・フォード副大統領が大統領に就任、ニクソンが行った可能性のある犯罪について、無条件の大統領特別恩赦を与えた。

シェーンもディーンも、7月1日に最高裁が示した免責に関する考え方をあてはめれば、ニクソンは法に守られ、辞任することもなかったと考える。

1970年7月から1973年4月まで、ウォーターゲート事件の間もほぼずっとニクソンの法律顧問を務めていたディーンは、今回の最高裁判決に「唖然とした」とコメントした。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:中国で値下げ競争激化、デフレ長期化懸念 

ワールド

米政権、農場やホテルでの不法移民摘発一時停止を指示

ワールド

焦点:イスラエルのイラン攻撃、真の目標は「体制転換

ワールド

イランとイスラエル、再び相互に攻撃 テヘラン空港に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 9
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 10
    先進国なのに「出生率2.84」の衝撃...イスラエルだけ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 8
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中