最新記事
生物多様性

腹ぺこコアラ「クロード」が教えてくれた環境問題

Conniving Koala Leads Friends Past Security to Eat Thousands of Plants

2024年6月4日(火)14時00分
ジェス・トムソン
(写真はイメージです) Gilles Rolland-Monnet-Unsplash

(写真はイメージです) Gilles Rolland-Monnet-Unsplash

<苗木盗難劇で浮き彫りになるコアラの生息地問題>

「クロード」の愛称で親しまれている腹ぺこのコアラが、植物の苗木を奪いに再び種苗場を訪れ、今度は仲間も連れてきた。

クロードは昨年、コアラの保護生息地に送られる予定だった3800ドル(約59万円)相当のユーカリの苗を、真夜中にむしゃむしゃと食べて追放された。

そして先ごろ、ヤツは再び姿を現し、白昼堂々と苗木を盗んでいる。

クロードによる最初の強盗から数カ月後、オーストラリアのニューサウスウェールズ州にあるイースタン・フォレスト・ナーセリーのオーナー、ハンフリー・ヘリントンは、苗木の周囲にコアラ防止用の防御策を施した。だが効果はなく、園内には少なくとも12頭以上のコアラが侵入したという。

【動画】腹ぺこコアラ「クロード」と仲間たち

コアラはオーストラリアで最もポピュラーな有袋類で、ほとんどの時間をユーカリの木の上で座って食事をして過ごす。2022年現在、オーストラリア首都特別地域、ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州では絶滅危惧種であり、国際自然保護連合のレッドリストでは絶滅危惧種に指定されている。

生息地全域で大規模な山火事が発生したほか、都市化や農業による生息地の破壊やクラミジアなどの病気が原因で、近年急速に個体数が減少している。生息地を保護し、個体数を管理するために、さまざまな保護プログラムが実施されている。

ヘリントンによると、クロード率いるコアラの集団は数千本の苗木を食べ尽くし、周辺の木々も荒らしてしまった。

「おそらく15年前にナーセリーで植えられたタラウッドの木は、その地域に1本しかなかった。コアラは本当にその木が好きなようだ。あの小さな土地にはコアラがたくさんいて、とても孤立していて、コアラの行き場がないんです」

費用はかかるが、少なくともクロードの話がコアラの窮状を世間に知らしめたことをヘリントンは喜んでいる。

「経済的な犠牲は多少あるにせよ、クロードが話題となったことで、コアラの絶滅危機に対する世間の認識をさらに高められました」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる

ワールド

米空母、南シナ海から西進 中東情勢緊迫化

ビジネス

ECB、政策の柔軟性維持すべき 不確実性高い=独連

ワールド

韓国、対米通商交渉で作業部会立ち上げ 戦略立案へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中