最新記事
米大統領選

「信じ難いほど不人気...」ガザ戦争で逆風のバイデン、再選のカギ握るのは「激戦州の少数派」

BIDEN’S BATTLEGROUND ELECTION

2024年6月5日(水)10時43分
ダニエル・ブッシュ(本誌ホワイトハウス担当)

キング牧師暗殺後の暴動で廃墟と化した街

キング牧師暗殺後の暴動で廃墟と化した街(1968年) CHICAGO HISTORY MUSEUM/GETTY IMAGES

アメリカは今、ベトナム戦争やイラク戦争の頃よりはるかに党の方針に沿って二極化している。バイデンの国際協調路線とトランプの孤立主義は、外交政策をめぐってより厳しい選択を有権者に迫ると、歴史家らは言う。

ソーシャルメディアも一般市民が外国の出来事について情報を収集する方法を変え、ガザをめぐる世論の世代間ギャップを広げている。

「20年前は若者と高齢者の情報源はもっと重なっていた」と民主党の世論調査専門家レイクは指摘する。昨今は「若い世代はTikTok(ティックトック)が一番の情報源」で、主流のニュース主体の上の世代に比べてガザでの暴力映像に触れやすいという。

「若者と高齢者は異なる2つの別々の戦争を見ている」

今回の大統領選はガザとは無関係の要因でも過去の大統領選とは違っている。二大政党の候補者が共に70歳を超えていて、再選を目指すトランプは4つの刑事裁判(本人によれば「政治的迫害」)に直面している。

ほとんどの有権者は外交政策ではなく、経済、移民、中絶などの問題を重視するはずだと、共和党の世論調査専門家ロバート・ブリザードは本誌に語った。「今回はバイデンの経済運営に対する評価とトランプの人格に対する評価が争点になる」

それでも過去のアメリカの政治における転機を思わせる側面は残っていると、アラブ・アメリカ研究所のゾグビーは言う。ベトナム戦争は68年の大統領選がニクソン有利に傾いた唯一の要因ではないが「非常に重要な役割を果たしたのは確かだ」。

進歩的な若者をはじめバイデンがイスラエルを支持していることに憤る有権者にとって選択肢は「トランプかバイデンかではなく、バイデンに投票するか誰にも投票しないかだ」。

今回の大統領選は異例だらけ

バイデン支持者は最終的にはトランプではなくバイデンを支持するはずだと、バイデン陣営は踏んでいる。秋には左寄りの有権者は今回のトランプの選挙公約に目を向けるに違いないと、民主党は考えている。

トランプは今回、再選のあかつきにはイスラム教徒が多数派の国からの入国禁止を復活させ、不法移民取り締まりの一環としてアメリカ史上最大規模の退去作戦を行い、「NATOの目的と使命」を再検討すると公約。

国防費が目標(GDPの2%)に達していない加盟国に対してはロシアが「好き勝手に振る舞う」ことを奨励するとも発言している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米CB景気先行指数、8月は予想上回る0.5%低下 

ワールド

イスラエル、レバノン南部のヒズボラ拠点を空爆

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中