最新記事
ガザ紛争

バイデンがネタニヤフに「最後通告」、軍事支援見直しを示唆 その数時間後、イスラエルは...

2024年4月5日(金)19時22分
ロイター

イスラエル政府はホワイトハウスの声明発表から数時間後、ガザへの支援物資流入を増やすための幾つかの対応策を発表。ただこれが米国の要求を十分に満たすのかどうかはまだ分からない。

<堪忍袋>

イスラエルがガザで市民にとって比較的安全な避難場所として最後に残った最南部ラファへの地上侵攻を計画していることについても、米国は思いとどまるよう働きかけを強めてきた。

米国とイスラエルの協議に詳しい関係者の1人は、バイデン氏が自らの懸念を伝え、ネタニヤフ氏がイスラエル側の方針の妥当性を主張する緊迫した電話でのやり取りが時には30分続いたケースもあったと明かす。

あるホワイトハウス高官によると、米国とイスラエルの会話は「非常に直接的かつ率直」で、米側の発言者にはハリス副大統領やブリンケン氏、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)などが含まれていた。

同高官は、ガザで支援従事者や市民が殺害されることは決して許されないと強調し、包括的な解決策が求められると付け加えた。

バイデン氏は長らく米国のイスラエル支援を抑制することを避けてきたが、とうとう堪忍袋の尾が切れる段階に達しているかもしれない。

かつて国家安全保障会議(NSC)で中東問題を担当していたマイク・シン氏は「ガザにおけるイスラエルの軍事作戦について、それを支持する米国内と国際的なコストが、作戦の成果よりも大きくなるとバイデン政権が感じていたポイントは常にあったはずだ。驚くのはそれが現実になっていることではなく、そこに至るまでの時間がとても長かったことだ」と話した。

現在ワシントン近東政策研究所に属するシン氏は、イスラエルが米国の提示した条件を満足させられなければ、次に起こりそうな事態は米国が国連安全保障理事会で、2006年にイスラエルとレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラを停戦させたような決議案を成立させようとすることだろうとみている。

シン氏は「武器供与に条件を付けるのは議会で強い反対に直面する公算が大きく、イスラエルをヒズボラや他の親イラン組織の攻撃に対して脆弱にしてしまう」と指摘した。

ただバイデン氏は先月、ラファ侵攻は「越えてはならない一線」になるとくぎを刺した後で、イスラエル向けに「防衛目的」の全ての兵器は決して供与を停止しないとの意向を表明。攻撃兵器の供与については明らかにしなかったため、状況次第では供与に条件を付けるのではないかとの観測が浮上している。

元中東担当国家情報副長官のジョナサン・パニコフ氏は、バイデン氏は米国とイスラエルの関係を揺るがすほどの、例えば高額兵器の供与差し止めや国連でイスラエル支持を完全に放棄するといった劇的な措置は講じそうにないと予想しつつも、小型兵器供与に条件を付けたり、パレスチナ人に危害を加えているユダヤ人入植者へのさらなる制裁を発動したりする可能性はあるとの見方を示した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中