最新記事
ウクライナ戦争

ロシア国民に「自家栽培」を奨励...プーチンがエクアドルからのバナナ輸入を禁止した理由とは?

Putin's Bananas Ban Backfires as Russians Told to Grow Their Own Fruit

2024年2月19日(月)14時00分
イザベル・ファン・ブリューゲン
ウラジーミル・プーチン murathakanart-Shutterstock

ウラジーミル・プーチン murathakanart-Shutterstock

<プーチン大統領は昨年末の記者会見で珍しく謝罪。輸入品の不足と需要増大が原因で卵の値段が急騰したと述べていた>

ロシアでバナナが不足する見通しとなり、国民が自家栽培を奨励されている。2月上旬にウラジーミル・プーチン大統領は、最大の供給国だったエクアドルからのバナナ輸入を禁止した。これは兵器の移転をめぐる争いに起因しているようだ。

消費者監視機関、ロシア連邦動植物検疫局の産業専門センター長は現地メディアのガゼタに対し、あと1カ月で全国的にバナナが不足するだろうと予測。バナナの自家栽培を始めるよう国民に促した。

これに先立ちプーチン大統領は2月2日、エクアドルの5社からのバナナ輸入を停止した。バナナの貨物から害虫が検出されたことを受けた措置と説明している。その数週間前にエクアドル政府は米政府との間で、旧ソ連時代の軍装備品を米国製の新鋭兵器と交換するという2億ドル相当の取引に応じていた。

米政府によると、ロシアが2022年2月に始めた戦争が続く中、エクアドルが保有していた旧ソ連時代の装備品はウクライナに送られる。

この取引についてロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、「国外の利害関係者の圧力に屈した無謀な判断」としてエクアドルを非難。「もしそれがエクアドルの言うような『くず鉄』だったとすれば、ワシントンが新鋭装備品との交換を持ちかけるはずがない。しかも相当の量だ」と強調した。

地元メディアによると、ロシアはバナナの90%をエクアドルから輸入している。国営RIAノーボスチ通信は、ロシアの輸入禁止でエクアドルは年間最大7億5400万ドルの損失が出る可能性があると伝えた。

本誌はロシアとエクアドルの外務省に電子メールでコメントを求めている。

あと1カ月で不足に陥るという予測についてクニャツコフは、禁輸前にエクアドルから輸入され、まだロシアの店頭に出回っていないバナナがあると説明した。

ただし不足は一時的なもので、バナナの一部はインドからの輸入を確保しているものの、まだ物流面の問題があるとしている。

一時的な不足はロシア国内でのバナナ栽培で補うことができるとクニャツコフは言い、クラスノダールで熱帯植物を順化させる実験に成功したと指摘した。

ロシア全土で品薄によって物価が高騰している実態は、本誌の取材で明らかになっていた。

プーチン大統領は昨年末の記者会見で珍しく謝罪。輸入品の不足と需要増大が原因で卵の値段が急騰したと述べていた。

「この問題については申し訳なく思う。政府の仕事が追い付かなかった」。プーチン大統領は12月14日の記者会見でそう語った。「近い将来、この状況は是正されると約束する」

(翻訳:鈴木聖子)

ニューズウィーク日本版 ガザの叫びを聞け
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月2日号(11月26日発売)は「ガザの叫びを聞け」特集。「天井なき監獄」を生きる若者たちがつづった10年の記録[PLUS]強硬中国のトリセツ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領府長官が辞任、和平交渉を主導 汚職

ビジネス

米株式ファンド、6週ぶり売り越し

ビジネス

独インフレ率、11月は前年比2.6%上昇 2月以来

ワールド

外為・株式先物などの取引が再開、CMEで11時間超
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 10
    筋肉の「強さ」は分解から始まる...自重トレーニング…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中