最新記事
経済制裁

ロシアの良き隣人、中国の銀行が制裁を恐れて逃げ始めた

Russia Reacts After Chinese Bank Threatens Putin's Economic Lifeline

2024年2月13日(火)19時00分
ジョン・フェン
プーチンと習近平

ウクライナ侵攻を責めないでくれるプーチン(右)の良き友、習近平(2019年7月、モスクワのクレムリンで)Maxim Shipenkov/Pool via Reuters/File Photo

<中国の複数の銀行が、西側の制裁に引っかかることを恐れてロシア企業との取引から手を引き始めた。ロシアは「問題は解決できる」とうそぶくが>

ロシア政府は、中国のある銀行がロシア輸出業者との取引のすべてを一時的に停止すると決定したことに関する懸念を打ち消そうとしている。ウクライナ戦争で西側諸国からの孤立がいっそう深まるロシアにとって、中国の銀行によるこの動きは、ロシアの主要なライフラインを危うくするものだ。

ロシアのアンドレイ・ルデンコ外務次官は、自国企業と、隣国である中国との間の決済に、(金融取引サービスSWIFTの代わりにロシアで使われているSPFSも含めて)問題は生じていないと主張した。

 

ロシアの国営通信社であるタス通信は2月9日、ルデンコの発言として次のように伝えた。「大した問題ではない。中国のいくつかの銀行は、(欧米に)制裁されることを恐れて、予防策として取引を自粛している。しかし、この問題は解決されると確信している」

中国は、ウラジーミル・プーチン大統領が2年前、ウクライナへの侵攻を決断したとき、表立ってはロシアを批判しなかったありがたい国だ。だが中国政府がロシアを政治的支えているのに対し、中国の多くの企業や金融機関は、西側の制裁を回避しようとしている。

春節明けが危ない

中国の大手銀行のいくつかは、アメリカの制裁を受けているロシア防衛産業との取引を警戒し、自行のサービスにアクセスすることを制限したり、関係を断ったりしている。ウクライナ侵攻に抗議してマスターカードやビザカードがロシアから撤退した後、それに代わる決済システムだと謳っていた中国のユニオンペイも、リスクが高過ぎるとしてロシアとの取引を停止した。

それでも、2023年における中国とロシアの二国間貿易は活況だった。中国の通関データによれば、エネルギーと農産物の輸入増加に後押しされ、年間輸入額は前年比26.3%増の2401億ドルに達した。

ロシアのビジネス紙ベドモスチは2月第2週、浙江長州商業銀行がロシアおよびベラルーシの顧客との取引をすべて停止したと報じた。ベドモスチによれば、中国東部にあるこの銀行は、西側の制裁を受けるリスクは限定的と考えられ、しかもロシアの輸出業者各社にとっては主要な金融機関だった。

浙江長州商業銀行が、ロシアおよびベラルーシ企業との決済を、全ての通貨に関して停止したのは、2023年12月に米国が発表した対ロシア金融規制の拡大と関連しており、「二次的制裁」を受けるリスクが拡大するのを恐れた可能性がある。

本誌の取材に応じた専門家たちは、今回の動きの影響は、中国の経済活動が一般的に低水準となる春節後に現れる可能性が高いと述べた。

タス通信によればルデンコは、浙江長州商業銀行が慎重すぎる可能性を示唆しながら、ロシアと中国がこの問題を解決することへの自信を見せた。

ルデンコは、ロシアが中国との貿易を拡大していることを指摘した。ロシアによれば、2023年の二国間貿易はほぼ例外なく、ロシアのルーブルか中国の人民元で決済されていた。「そしてこれは、私たちが問題を解決している第一の証しだ」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ

ビジネス

中国10月物価統計、PPIは下落幅縮小 CPIプラ

ワールド

フィリピン、大型台風26号接近で10万人避難 30

ワールド

再送-米連邦航空局、MD-11の運航禁止 UPS機
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中