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安全保障

寸前まで検討されていた「アメリカの北朝鮮攻撃」、なぜ攻撃を断念したのか?

The Attack That Wasn’t

2024年2月6日(火)18時25分
A・B・エイブラムズ(米朝関係専門家)
米韓合同軍事演習

北朝鮮に対する軍事的選択肢の議論は大きく変化している(2019年4月の米韓合同軍事演習) U.S. Army photo by Spc. Mearl Stone, 55th Combat Camera

<かつて北朝鮮は圧倒的に差し迫った標的だったが、その軍事力がアメリカの攻撃計画を延期させた。そして北朝鮮の核・ミサイル開発は既成事実になってしまった>

2017年後半にアメリカの諜報機関は、北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星14」「火星15」の発射実験を行ったことを踏まえて、米本土を核攻撃する能力を獲得したという見解を固めた。以来、北朝鮮に対する軍事的選択肢の議論は大きく変化してきた。

アメリカではそれまで、北朝鮮への攻撃を求める声がかなり高まっていた。トランプ政権でも1年目は、上院議員や軍の指導者が強硬な主張をしていた。

しかし20年以降、北朝鮮のICBMの発射実験に対し、アメリカは態度を和らげている。以前は北朝鮮のミサイル抑止力の近代化は容認できないと厳しく非難し、しばしば制裁で応じた。

2019年にはマイク・ポンペオ国務長官とジョン・ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官(肩書は全て当時)が、米本土を攻撃可能なミサイルの発射実験のみ中止するという理解を、北朝鮮との間で共有していると強調した。トランプ政権はこの年、この部類でない複数の弾道ミサイル発射実験にあえて対応しなかった。

こうした方針はバイデン政権にも引き継がれた。北朝鮮がミサイル兵器の近代化を継続していることに、かつては西側諸国も憤慨したが、今や既成事実になった。その過程は、冷戦時代にソ連と中国の核およびミサイル抑止力と、徐々に折り合いをつけていったことに重なる。

2018年以前は、核ミサイル開発計画を後退させるか、それとも北朝鮮全土を侵略して占領するかという軍事的選択肢が広く議論された。その一方で、北朝鮮がアメリカの他の潜在的な攻撃目標に比べて著しく優れた通常戦力を有することは長い間、一定の抑止力になってきた。

この点は、北朝鮮がユーゴスラビアやイラク、リビアなどと同じ運命をたどらないことを保証する。1994年にクリントン政権が、2016年にオバマ政権が北朝鮮の核開発プログラムを攻撃する寸前まで至ったときも、実際に重要な抑止力になった。

2002年にブッシュ(息子)政権はイラク侵攻の準備を進めながら、並行して北朝鮮への攻撃を検討した。このとき北朝鮮に対して軍事行動を取らないと決断したことについて、ローレンス・ウィルカーソン元米陸軍大佐は昨年11月のインタビューで新しい洞察を示している。

優先的な標的だったが

当時、コリン・パウエル国務長官の首席補佐官を務めていたウィルカーソンは、国防総省で受けたブリーフィングを次のように振り返る。

「北朝鮮と戦争になり、イラクと戦争になり、その後はシリア、そしてイランと戦争になるだろう。ただし、おそらくシリアとイランとは戦う必要はない。彼らは、イラクでわれわれがやることを見て、ひるむだろう。そのように聞かされた」

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