最新記事
ウクライナ戦争

もう取り返しがつかない?ロシアがウクライナ侵攻で犯した5つの失策

Russia's Top 5 Blunders in Two Years of Ukraine War

2024年2月27日(火)17時39分
デービッド・ブレナン

「ロシア軍はキーウ周辺に集結していた部隊に対し、意味のある補給をしなかったし、助けになることもしなかった」と、当時、国防総省報道官だったジョン・カービーは、渋滞で立ち往生した補給部隊について語った。「ウクライナ軍は非常に機敏に、橋を破壊し、先導車両を攻撃して動けなくすることで、ロシア軍輸送隊を足止めした」。

「ロシア軍に能力があったとしても、厳しい状況だった」と元陸軍大佐でオハイオ州立大学のピーター・マンスール教授(戦史)はAP通信に語った。「近代的な機甲戦を遂行することは完全に不可能であることが証明された」

■2)黒海で味わった屈辱

ロシアの陸・空・海軍は2年間の戦争で屈辱的な損害を被った。地上戦は泥沼化し、空軍はウクライナの制空権を掌握できなかった。そして、ロシアが誇る黒海艦隊は、ウクライナには対抗する海軍が存在しないというのに、その攻撃で突如、ひどい損害を被った。

黒海の港湾都市オデーサ周辺の南部海岸線にロシアの陸海空軍が一斉に攻め込むという当初の話は無に帰した。4月には、黒海艦隊の旗艦である誘導ミサイル巡洋艦「モスクワ」がウクライナの対艦ミサイルによって撃沈されるという衝撃的な事件があり、黒海艦艇はウクライナ沿岸から撤退した。

巡洋艦モスクワの沈没

乗組員510人の巡洋艦モスクワの沈没は、第二次世界大戦以降の海戦における最も大きな損失となった。これを皮切りに次々と軍艦が攻撃された。2022年の侵攻以前には、ロシアの艦隊は約80隻あったと考えられている。ウクライナは現在、大小合わせて少なくとも25隻のロシア艦を撃沈し、さらに15隻が損傷のため修理に回されたと主張している。

ロシア海軍は黒海で終始劣勢を強いられており、ウクライナの港湾封鎖を維持することができず、占領下のクリミア半島にある本拠地を守ることさえできていない。対艦ミサイル、ウクライナ製の海軍ドローン、西側諸国から供与された巡航ミサイル、コマンド部隊はいずれもロシアの防衛網を突破できることが証明されている。

モスクワの沈没は今でもロシアにとって最も手痛い損失だが、複数のロプーチャ級揚陸艦、ロストフ・ナ・ドヌー潜水艦、タランタル級ミサイル艦イヴァノヴェツも失った。クリミアの軍港都市セバストポリでは重要な乾ドックのインフラが破壊され、クリミアとロシアを結ぶケルチ海峡大橋は海軍の無人偵察機の攻撃で損傷を受けた。

セバストポリにある黒海艦隊司令部の建物でさえ、ストーム・シャドウ巡航ミサイルの攻撃で破壊された。

「どれもモスクワと同じ運命をたどるか、黒海東部に逃げてそこにとどまるまで、われわれはロシア艦船を攻撃する」と、ウクライナの元国防相で、現在は国防省顧問を務めるアンドリー・ザゴロドニュクは昨年9月本誌に語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、売れ残り住宅の買い入れ検討=ブルームバーグ

ワールド

豪が高度人材誘致狙い新ビザ導入へ、投資家移民プログ

ビジネス

米シェブロン、4月に最も空売りされた米大型株に テ

ワールド

米ユーチューブ、香港で民主派楽曲へのアクセス遮断 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中