最新記事
化学物質

発癌性も指摘される化学物質「PFAS」の正しい怖がり方...生活者が意識すべきこととは?

Avoiding “Forever Chemicals”

2023年12月21日(木)13時40分
ハンナ・ドクター・ローブ

231226P77_PFAS_02.jpg

飛行場で使われる消火剤にもPFASは存在する SMITH COLLECTIONーGADO/GETTY IMAGES

PFASを含む製品がごみ処理場に廃棄されれば、土壌や地下水にPFASが染み出し、やがて飲料水や食料に入り込むかもしれない。ペットボトルの水にも概して多くのPFASが含まれていると、オレゴン州立大学環境衛生学研究センターのジェイミー・デウィット所長は指摘する。

どの化学物質にも言えることだが、害が生じるか否かは量次第だ。「一般論として(PFASに接する)頻度と期間と濃度が高まれば、癌などの悪影響が生じるリスクも高まる」と、非営利研究機関のRTIインターナショナルで環境衛生・水質部門の責任者を務めるジェニファー・ホポニック・レドモンは言う。

PFASが使用されているレインコートを時々着るより、PFASを含んだ水を飲み続けるほうが健康に悪い可能性があるのだ。つまり、本当に心配すべきなのは、産業から環境に漏れ出すPFASだ。購入する品物に過度に神経をとがらせても、問題から逃れることはできない。

それでも、生活の中のPFASを減らすのは好ましいことだ。では、そのために何ができるのか。

「例えば、水道の水源を調べ、PFASが含まれていないか確認すればいい。もし含まれていれば、水道事業者がその濃度を下げるための対策を講じているか確認しよう」と、デウィットは言う。水源は変えられなくても、蛇口に浄水フィルターを取り付けることはできるだろう。

ホポニック・レドモンが提案するのは、電子レンジで作るポップコーンの購入をやめることだ。ポップコーンが入っている袋の内側は、PFASでコーティングされているのだ。年に1度程度なら問題はないが、「毎週子供に食べさせればかなりの量になる」と、デウィットは指摘する。

231226P77_PFAS_03v2.jpg

電子レンジで作るポップコーンの袋にもPFASは存在する ROBYPANGY/ISTOCK

身の回りのPFASを減らすのが難しいのは、製品にPFASを使用している企業に開示義務が課されていないためだ。それでも、焦げ付きにくい、汚れにくい、水をはじくといった宣伝文句で売られている製品には使われている可能性が高いと、ホポニック・レドモンは言う。

レインコートなど生活に不可欠なもの以外は、PFASを含む製品を買わないようにしてもいいだろう。では、購入済みの品物はどうすればいいのか。

慌てて全部捨てる必要はない。「フライパンのコーティングが剝げていなくて、フライパンを加熱しすぎないようにすれば、直ちに大量のPFASに触れる可能性は低い」と、シャイダーは言う。

「もっとも、その種のフライパンを新しく買おうとは、もう全く思わないけれど」

©2023 The Slate Group

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


ヘルスケア
腸内環境の解析技術「PMAS」で、「健康寿命の延伸」につなげる...日韓タッグで健康づくりに革命を
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ安全保証、西側部隊のロシア軍撃退あり得る

ビジネス

半導体製造装置販売、AIブームで来年9%増 業界団

ワールド

アルミに供給不安、アフリカ製錬所が来年操業休止 欧

ビジネス

川崎重社長、防衛事業の売上高見通し上振れ 高市政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中