最新記事
ウクライナ情勢

ロシア、ウクライナですでに「併合」した4州以外にも占領地を広げる新計画

Russia Has New and Extended War Plans in Ukraine: ISW

2023年12月18日(月)15時24分
ナタリー・ベネガス
ウクライナ軍のT-64戦車

占領地奪還のために戦っているのに……東部バフムト近くで位置に着いたウクライナ軍のT-64戦車(2月16日)

<最近になってプーチンは新たな「拡張主義」的な発言に転じ、ロシア軍が2024〜2026年に向けた戦争長期化の準備を進めている、と米ISWが分析>

【動画】米HIMARSロケット砲が「ロシア軍Mi8ヘリコプター」に命中する瞬間...露軍ヘリの損失が拡大中

 

ロシアがウクライナに侵攻してからまもなく3年が経つ。そんな中、ロシアが占領地の拡大に向けた新たな計画を立てていると報じられた。アメリカのシンクタンク、戦争研究所(ISW)は12月15日、この計画はロシアの戦争長期化に備えたこれまでの動きと一致するとの分析を示した。

ロシアはこれまでにウクライナのドネツク州、ヘルソン州、ルハンスク州、ザポリージャ州を一方的に「併合」。

最近では、ウクライナ軍の激しい抵抗を受けてきたドネツク州の都市アウディーイウカでも、少しずつ包囲の輪を狭めている。ロシアが攻撃を始めた10月10日以降、今回の戦争でも有数の激しい戦闘を繰り広げている。

ドイツのビルト紙は先に、ロシアが「(違法に)併合した4州以外のウクライナの領土を2024〜26年の間に占領する」計画を立てていると報じた。

同紙が情報筋の話として伝えたところでは、ロシアは24年末までにドネツク州とルガンスク州の全域の占領と、ハルキウ州のオスキル川まで前進することを計画しているという。

プーチンは拡張主義的な発言に「回帰」

これについてISWは以下のように指摘した。「このたび報道されたロシアの2026年までの計画は、ロシアが長期的な戦争に向けた準備を続けていることと軌を一にする」「ロシア軍司令部は戦略備蓄を形成するため、(軍の)長期的な再編と拡大を続けている。またロシアは、長期的な戦争を維持するために徐々に防衛産業基盤の動員を進めてきた」

この分析で、ISWはビルトの伝えた新しい計画は十分に現実味があるとの見方を示した。理由はロシアのウラジーミル・プーチン大統領が先ごろ、「ロシアの領土」からのウクライナ部隊の撤退が戦争終結の必要条件だとする「拡張主義的な発言」を行っていたからだ。

「ロシアが(違法に)併合した4州を超えて占領を拡大しようとしているという中長期計画も、ウラジーミル・プーチン大統領を含むロシア高官が最近、拡大主義者的な発言を再び始めたことや、ロシア軍がハルキウ州の占領地を拡大すべく攻撃を続けていることを考えると、現実味のある話だ」とISWは指摘した。

またISWはこうも述べた。「ロシア高官は声明で、現在の前線および併合された4州を超えてウクライナの領土をさらに併合する意図を示している」

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中