最新記事
ドローン

ウクライナのドローン優位は終わった?──ロシアが激戦地に大量配備

Russia has snatched away Ukraine's drone advantage

2023年12月14日(木)18時08分
エリー・クック
ロシア製の攻撃用FPVドローンを持つロシア兵

ロシア製の攻撃用FPVドローンを持つロシア兵(11月9日、クリミア) REUTERS/Alexey Pavlishak

<ドローン技術で遅れをとっていたロシアが一部の激戦地でウクライナを上回る数のFPVドローンを投入し始めた>

【動画】これが最強の防御法? 攻めてきた「自爆ドローン」を、「シャベル」で叩き壊すロシア兵

ウクライナとの「ドローン戦争」で後れを取り、なんとか巻き返しを図ってきたロシアが、激戦地でのFPVドローンの数でウクライナを逆転したようだ。ウクライナのある当局者が明かした。

ウクライナ軍第92機械化旅団のドローン部門「アキレス」を指揮するユーリー・フェドレンコによれば、ウクライナ東部と南部の激戦地では、ウクライナ軍のFPVドローン1機に対してロシア軍は5~7機のFPVドローンを展開しているという。


フェドレンコは12月12日にウクライナのメディアに対して、ロシア軍のFPVドローンはウクライナ領空に飛来して、標的になり得るものを探していると述べた。「ウクライナ軍は現在、そのようなやり方はしていない。標的が定まっている場合にのみ、FPVドローンを使用している」

本誌はこの件についてウクライナ軍にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

ウクライナは2022年2月にロシアによる本格侵攻が始まって以降、長い時間をかけてドローン調達のためのクラウドファンディングや技術開発を行い、「ドローン軍」を創設した。ドローンは偵察から自爆攻撃、砲撃の誘導に至るまで戦闘のほぼ全ての側面で使用されている。

中でもよく活躍しているのがFPVドローンだ。FPVドローンは、ドローンが見ている映像をそのままゴーグルやパソコンなどで見ながら標的を見つけたり攻撃したりできる。戦場の映像記録にも使われ、ウクライナ軍は攻撃したロシア軍の映像をインターネット上で頻繁に公開している。FPVドローンは安価で、市販のパーツで作れるが、敵の車両や兵士に大きな打撃をもたらすことができる。

ロシアがキャッチアップ

西側の専門家は以前から、ウクライナがさまざまな種類のドローンの開発に長けていると称賛してきたが、今では、後れを取っていたロシアがウクライナに追いつきつつあると言うアナリストやウクライナ当局者が増えている。

米シンクタンク「海軍分析センター」のサミュエル・ベンデットによれば、ウクライナはFPVの生産で大幅にリードしていたが、その後ロシアがドローンの開発と増産に本腰を入れて前線に大量の無人機を送り込むようになっている。

ベンデットは、ロシアでは国の機関やその関連団体が総力を挙げてドローンの開発・増産を行っており、「その成果としてロシア軍に1カ月あたり何万機ものFPVドローンを供給している可能性が高い」と本誌に語った。

現在ウクライナの戦場でどれだけのFPVドローンが展開されているのかを正確に把握するのは困難だが、ロシアのFPVドローン開発はおそらく「飛躍的な成長」を遂げているとも指摘する。ウクライナ軍も、前線の複数カ所でロシア軍のドローンが増えていると報告してきているという。

米フォーブス誌は、ロシアのあるボランティア団体は最近、毎月およそ1000機のFPVドローンの生産を行っていると報じた。


ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本のCEO
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月1日号(6月24日発売)は「世界が尊敬する日本のCEO」特集。不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者……その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「停戦は発効」、違反でイラン以上にイスラ

ワールド

ガザの食料「兵器化」、戦争犯罪に該当 国連が主張

ワールド

ドイツ、25年度予算案を閣議了承 投資と利払い急増

ビジネス

独IFO業況指数、6月は予想以上に上昇 景気底入れ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中