最新記事
米軍機事故

オスプレイの特殊能力は突入作戦に欠かせない

Ospreys Still 'Important' to U.S. Military Despite Deadly Crash

2023年12月6日(水)15時51分
エリー・クック
オスプレイ

物理の法則に逆らって浮くオスプレイはバランスを崩しやすい(4月26日、フィリピンのサンバレス州で合同演習中の米軍V-22オスプレイ) REUTERS/Eloisa Lopez

<屋久島沖の墜落事故だけでなく、これまで何度も人命にかかわる事故を繰り返しているオスプレイ。安全上のリスクも上回る「特殊能力」とは>

鹿児島県屋久島沖で11月29日に米空軍のCV-22輸送機オスプレイが墜落し、乗っていた兵士全員が死亡したことから、米軍に対する批判が高まっている。ヘリコプターと飛行機のハイブリッドであるオスプレイはこれまでも多くの事故を起こし、死傷者を出している。だが米軍は、オスプレイの使用を停止する気はない。

<動画>やはり怖い!特殊任務に不可欠なオスプレイの超・離着陸


今回の事故は、山口県の米軍岩国基地から沖縄の嘉手納基地に向かう訓練飛行中に起きた。米軍は5日、乗組員8人全員の死亡を確認した。

米軍は数百機のオスプレイを保有しているが、今回の事故が起きる前から、何度も重大な事故が起きていた。

今年8月、オーストラリア北部での共同訓練中にMV-22Bオスプレイが23人を乗せたまま墜落し、3人の米海兵隊員が死亡、安全性に疑問符がついた。

2022年6月にはMV-22Bオスプレイがカリフォルニア州グラミス近郊での訓練中に墜落、米海兵隊員5人が死亡した。同年 3月にもノルウェーで行われたNATOの演習中に海兵隊のMV-22Bオスプレイが墜落し、米軍兵士4人が死亡した。

2016年12月には、米軍のオスプレイが沖縄本島付近に墜落する事故が起きている。乗組員5人が負傷し、アメリカはオスプレイの飛行を一時的に停止した。

危険と隣り合わせの構造

オスプレイはヘリコプターと同じように垂直に離着陸できるティルトローター機。米軍によると、オスプレイにはいくつかのバリエーションがあり、戦闘中の部隊を支援するほか、特殊作戦部隊の潜入、脱出、補給任務用に設計されている。

オランダのシンクタンク、ハーグ戦略研究センターのアナリスト、フレデリック・メルテンスによれば、オスプレイは「真に実践的な初のティルトローター機」であり、それゆえ「非常に複雑な機械で、多くのことがうまくいかなくなる可能性がある」。

「ヘリコプターとは、物理の法則に逆らってエンジンの力だけで飛行状態を維持する航空機だ」と、彼は本誌に語った。「それだけに、何かトラブルが起こるとあっという間に危機に陥る」

「そういうヘリコプターの一種であるオスプレイが人員輸送に使われているという事実が、事故の犠牲を大きくしている」と、彼は言う。

オスプレイには「機械的故障の長い歴史がある」と言うのは、海兵隊の退役軍人で弁護士のティモシー・ロレンジャーだ。

だが、アメリカはすぐにはオスプレイを手放すことはないだろう、と専門家はみている。

「墜落事故が起こるたびに、なぜオスプレイはまだ飛んでいるのかという疑問が起こる」と、ロレンジャーは言う。「答えは簡単だ。オスプレイは役に立ち、必要とされているからだ」

メルテンスも同意見だ。「オスプレイは複雑さとリスクに見合う価値がある。従来のヘリコプターとは段違いのスピードと航続距離があるからだ」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、4.4万件増の23.6万件 季

ビジネス

中国経済運営は積極財政維持、中央経済工作会議 国内

ビジネス

スイス中銀、ゼロ金利を維持 米関税引き下げで経済見

ビジネス

EU理事会と欧州議会、外国直接投資の審査規則で暫定
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 3
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 4
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 10
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中