最新記事
ロシア

ロシア軍元将校で反プーチン極右のギルギン、拘置所から大統領選に決死の出馬表明──「第2のプリゴジン」の運命か

New election rival spells bad news for the Kremlin

2023年11月21日(火)16時14分
イザベル・ファン・ブリューゲン
イーゴリ・ギルキン

裁判所の被告席に座ったギルギン。マレーシア航空機撃墜の主犯として有罪にもなっている(8月29日、モスクワ) REUTERS/Maxim Shemetov

<厳しいプーチン批判で訴追・拘留されている元ロシア軍将校ギルギンは、大統領選でプーチンの対立候補として名乗りを挙げた。プーチン当選が決まった「出来レース」を妨害するためと、黙っていても危うい自分の身を守るため。命懸けの挑戦だ>

元ロシア軍司令官のイーゴリ・ギルキンが、2024年の大統領選に立候補する意向を表明した。専門家はこの動きが、ロシア政府やウラジーミル・プーチン大統領にとって厄介な問題になるだろうと指摘している。

<画像>施設で殴られた後、とされるギルギンの顔

 

熱烈なナショナリストで、プーチン政権やロシア軍指導部のウクライナ侵攻戦略を公に批判してきたギルキンは、極右を扇動した疑いで7月に身柄を拘束され、訴追された。8月には公判前の拘留は不当だと不服申し立てを行ったものの退けられ、現在も拘留中だ。

ロシア連邦保安庁(FSB)の元大佐であるギルキンは、2014年にロシアがクリミア半島を一方的に併合した際に主要な役割を果たして名を馳せた。また同年7月17日にウクライナ東部ドネツク州の上空でマレーシア航空の旅客機が撃墜され298人が死亡した事件に関与したとして、オランダ・ハーグの裁判所から終身刑の判決を受けている。

ギルキンは7月、ロシアによるウクライナ本格侵攻について、ロシア軍の戦略や失敗を公に批判していたことで身柄を拘束された。身柄を拘束される数日前には、プーチンを「臆病で凡庸」な人物と呼び、プーチン政権があと6年続けばロシアはもたないだろうと述べていた。

やらせ選挙を妨害

ギルキンを支持する政治組織の代表を務めるオレグ・ネルジンは、11月18日にロシアの独立系メディア「SOTA」が公開した動画の中で、ギルキンが盟友たちに2024年3月17日に実施される大統領選への出馬に向けた準備を指示したことを明らかにした。

ギルキンはメッセージアプリ「テレグラム」の自身のチャンネルで、「今のロシアの状況で大統領選に出馬することは、詐欺師とポーカーをするようなものだと十分に理解している」と述べた。

自分の出馬表明が「愛国勢力を結集」させ、「既に当選者が決まっている虚偽の選挙」を妨害できることを期待しているとも述べ、「これは私たちにとって、外部と内部の脅威に対抗して団結するチャンス」だと呼びかけた。

ギルキンによる出馬表明で、プーチンの指導力やウクライナ戦争に疑問を呈した彼の過去の発言に改めて注目が集まることになり、ロシア政府にとって厄介な問題になっている。本誌はこの一件についてロシア外務省にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール(11月10日)】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ「サイバートラック」、価格6万990ドルから

ビジネス

米アッヴィ、がん治療薬のイミュノジェン買収 101

ワールド

米が新たな北朝鮮制裁、偵察衛星打ち上げで 日豪韓と

ビジネス

物言う株主ペルツ氏、ディズニーに最低3人の取締役選
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ間に合う 新NISA投資入門
特集:まだ間に合う 新NISA投資入門
2023年12月 5日号(11/28発売)

インフレが迫り、貯蓄だけでもう資産は守れない。「投資新時代」のサバイバル術

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ミャンマー分裂?内戦拡大で中国が軍事介入の構え

  • 2

    米空軍の最新鋭ステルス爆撃機「B-21レイダー」は中国の次世代超音速ミサイルにかなわない?

  • 3

    最新の「四角い潜水艦」で中国がインド太平洋の覇者になる?

  • 4

    ロシアはウクライナ侵攻で旅客機76機を失った──「不…

  • 5

    「大谷翔平の犬」コーイケルホンディエに隠された深…

  • 6

    男たちが立ち上がる『ゴジラ-1.0』のご都合主義

  • 7

    <動画>ロシア攻撃ヘリKa-52が自軍装甲車MT-LBを破…

  • 8

    働けるのに「あえて働かない」人たち...空前の「人手…

  • 9

    1日平均1万3000人? 中国北部で「子供の肺炎」急増の…

  • 10

    なぜアメリカは今、ウクライナのために「敗戦」を望…

  • 1

    <動画>ロシア攻撃ヘリKa-52が自軍装甲車MT-LBを破壊する瞬間

  • 2

    ロシアはウクライナ侵攻で旅客機76機を失った──「不意打ちだった」露運輸相

  • 3

    「超兵器」ウクライナ自爆ドローンを相手に、「シャベル1本」で立ち向かうロシア兵の映像が注目集める

  • 4

    「大谷翔平の犬」コーイケルホンディエに隠された深…

  • 5

    下半身が「丸見え」...これで合ってるの? セレブ花…

  • 6

    ミャンマー分裂?内戦拡大で中国が軍事介入の構え

  • 7

    米空軍の最新鋭ステルス爆撃機「B-21レイダー」は中…

  • 8

    ヨーロッパに「鉄のカーテン」が復活──ロシアの新種…

  • 9

    またやられてる!ロシアの見かけ倒し主力戦車T-90Mの…

  • 10

    1日平均1万3000人? 中国北部で「子供の肺炎」急増の…

  • 1

    <動画>裸の男が何人も...戦闘拒否して脱がされ、「穴」に放り込まれたロシア兵たち

  • 2

    <動画>ウクライナ軍がHIMARSでロシアの多連装ロケットシステムを爆砕する瞬間

  • 3

    「アルツハイマー型認知症は腸内細菌を通じて伝染する」とラット実験で実証される

  • 4

    戦闘動画がハリウッドを超えた?早朝のアウディーイ…

  • 5

    リフォーム中のTikToker、壁紙を剥がしたら「隠し扉…

  • 6

    <動画>ロシア攻撃ヘリKa-52が自軍装甲車MT-LBを破…

  • 7

    ここまで効果的...ロシアが誇る黒海艦隊の揚陸艦を撃…

  • 8

    ロシアはウクライナ侵攻で旅客機76機を失った──「不…

  • 9

    <動画>ウクライナ軍ドローンが、「奪還」したドニ…

  • 10

    また撃破!ウクライナにとってロシア黒海艦隊が最重…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中