最新記事
健康

【検証】「メガネの長期使用で視力が落ちる」というネット情報は本当?

Correcting Vision Issues

2023年11月10日(金)13時30分
アナ・ギブズ(科学ジャーナリスト)
メガネやコンタクトレンズの長期使用で視力が低下する心配はないし、度が合っていれば疲れることもない Vimaliss-Shutterstock

メガネやコンタクトレンズの長期使用で視力が低下する心配はないし、度が合っていれば疲れることもない Vimaliss-Shutterstock

<「私は愛と喜びで世界を見ます」と唱えれば近視は治ると某インフルエンサーは主張するが>

強い近視の私は時々、不安に駆られる。装着しているコンタクトレンズはせいぜい1、2日しか使えない。山で迷子になるか、映画『ハンガー・ゲーム』のような殺し合いのサバイバルゲームに巻き込まれたら、断崖から落ちたり、見えない敵に攻撃されたりしてあっけなく死んでしまうかもしれない。

そこに「大丈夫」とささやく人が現れた。ちょっとしたエクササイズと自己暗示で近視は治せる、というのだ。

インフルエンサーのサマンサ・ロータスは最近「メガネは要らない」と主張して大炎上した。11ドル払って彼女の視力回復クラスに参加した人がTikTok(ティックトック)で明かした話によると、ロータスは「目のヨガ」をやり、「私は愛と喜びで世界を見ます」と唱えればメガネにさよならできると説いているとか。「目の周りにエッセンシャルオイルを塗る」ことも推奨しているらしい(彼女はエッセンシャルオイルの製造会社とアフィリエイト契約を結んでいる)。

こうした方法で視力が改善されるという「エビデンス(科学的根拠)はゼロ」だと、ワイル・コーネル統合医療センター(ニューヨーク)の眼科医クリストファー・スターは言い切る。

メガネ・コンタクト業界に反旗を掲げ、矯正レンズの使用者の不安をあおるロータス。その根底には多くの人が抱く疑問がある。「メガネやコンタクトレンズを長く使っていると視力が落ちるのでは?」という疑問だ。

実は世界の人口のかなりの割合が矯正レンズの「弊害」を信じている。サウジアラビアで昨年行われた調査では、若い成人の22%がメガネの使用は視力低下を招くと答えた。親たちを対象にしたインドの調査では23%、ナイジェリアの大学生に至っては、なんと64%がそう答えた。

熱烈な「反メガネ」の旗振り役の1人がアメリカ人の眼科医ウィリアム・ホラシオ・ベイツ。彼はロータスよりもはるかに早く、20世紀初め頃に「ベイツ・メソッド」と呼ばれる視力回復法を開発した。メガネを外し、黒い物をイメージする。さらには恐ろしいことに太陽を直視するといった方法である。彼はこれを著書『メガネなしでの完全な視力』にまとめ、1920年代に自費出版した。

BAT
「より良い明日」の実現に向けて、スモークレスな世界の構築を共に
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国ファーウェイ、上期は32%減益 多額の研究開発

ワールド

TSMC、企業秘密管理システムを欧米企業に販売へ=

ワールド

ウィッカー米上院議員が訪台、「台湾に自由の権利ある

ワールド

タイ憲法裁、ペートンタン首相の失職認める 倫理規定
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ」とは何か? 対策のカギは「航空機のトイレ」に
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 7
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 8
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    米ロ首脳会談の後、プーチンが「尻尾を振る相手」...…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中