【MVP記念】100年の歴史に残る2023年の大谷翔平、その軌跡と舞台裏――地元紙の番記者による独占レポートを全文公開

ONE FOR THE HISTORY BOOKS

2023年11月18日(土)18時10分
ジェフ・フレッチャー(オレンジ・カウンティー・レジスター紙記者)

OHTANISPECIALOUT.jpg

右肘の損傷が判明した2023年8月23日のレッズ戦、大谷は2回途中で降板した RONALD MARTINEZ/GETTY IMAGES


しかし負担は大きかったのだろう。タイガース戦後には初めて疲労を口にし、その後の数週間は体の節々で起きるけいれんに悩まされた。チームは休養を提案したが、大谷は試合に出続けた。

8月には一度、登板予定を回避したいと申し出た。それでも同月23日のシンシナティ・レッズ戦には予定どおり登板した。しかし2回途中で降板。その日のうちに検査すると右肘の内側側副靭帯の損傷が判明し、再び手術を余儀なくされた。

彼は投げるべきではなかったのか、エンゼルスは彼を止めるべきだったのか。大谷はしばらく報道陣を避けていたが、代理人のネズ・バレロが過熱する議論にクギを刺した。

「彼の体は限界に来ていた、そのことに周囲の人間が気付くべきだったという議論があるが、そういう問題じゃない」。バレロはそう断言した。

周囲の関係者の目には負傷で落ち込んでいるように見えた大谷だが、すぐに指名打者としての役割にエネルギーを集中させた。来シーズンは投げられないと知ったわずか数時間後、大谷は打者としてチームのラインアップに名を連ねていた。

「彼の精神力の強さと野球に対する情熱の証しだ」と、今夏に1カ月だけチームメイトだったベテラン投手ルーカス・ジオリト(現クリーブランド・ガーディアンズ)は言う。

「ショーヘイは献身的で、何よりもチームの勝利に貢献するためにプレーする。彼がけがをして何日か休んでも、誰も驚いたり怒ったりはしなかっただろう。でも彼は『OK、じゃ、これからは打つほうで』と言ったんだ。本当に特別な男だよ」

その数週間後、大谷に再び試練が訪れた。バッティング練習中に右脇腹を痛めたのだ。復帰を目指すも痛みは引かず、11試合連続の欠場。9月16日、シーズン終了まであと2週間というタイミングで残り試合を全て欠場することが決まった。

「ショーヘイはプレーすることが大好きだ」と、エンゼルスのペリー・ミナシアンGM(ゼネラルマネジャー)は語る。「メジャーの選手でいるのは当たり前のことではなく、毎日の努力、献身、真摯な姿勢が必要だと彼は自覚している。毎試合出場して、チームやファンのためにプレーしたいと思っている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、ウクライナに「最後通告」 NATO加盟

ワールド

南ア与党、白人主体野党と連立合意 30年間の単独政

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感、6月速報値は低下 インフ

ビジネス

米輸入物価、5月は前月比0.4%下落 予想に反し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名が海水浴中に手足を失う重症【衝撃現場の動画付き】

  • 3

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 4

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 5

    「これが野生だ...」ワニがサメを捕食...カメラがと…

  • 6

    この10年で日本人の生活苦はより深刻化している

  • 7

    国立新美術館『CLAMP展』 入場チケット5組10名様プレ…

  • 8

    ウクライナ軍がロシアのSu-25戦闘機を撃墜...ドネツ…

  • 9

    日本人の「自由」へのこだわりとは?...ジョージア大…

  • 10

    ジブリの魔法はロンドンでも健在、舞台版『千と千尋…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中