最新記事
台湾侵攻

台湾海峡に「海の橋」を架けるため中国がRORO船の生産を増強

China Ramps Up Building Ships That Could Help it Invade Taiwan

2023年10月18日(水)19時17分
アーディル・ブラール(中国ニュース専門ライター)

コーはさらに、中国政府が台湾侵攻を行なう際には、RORO船で中国本土と台湾を結ぶ「海の橋」を築く可能性もある、と付け加えた。

「侵攻が開始された場合、これらの船は、上陸拠点が確保された後で、後続部隊を運ぶ役割を果たすことになる。こうした上陸拠点には、人民解放軍の部隊の管理下に置かれた台湾の港湾も含まれる。また『海の橋』は、台湾で戦闘を行なう部隊のための補給路の役割も担うことになるだろう。人民解放軍は、これを後方支援の頼りとするはずだ」とコーは述べた。

台湾侵攻の際、現在の人民解放軍では上陸作戦を支援する能力に限界があるが、RORO船は、このギャップを埋められる可能性がある。

RORO船成功の条件

戦時における中国政府の台湾に対する海軍戦略において、RORO船は完璧なアプローチのように見える。だが、よくよく考えると、RORO船も標的にもなるはずだ。CSISレポートは、RORO船の活用にひそむ落とし穴についても触れておいる。つまりRORO船は、「対艦ミサイルを搭載し、攻撃能力を持つ航空機や戦艦による攻撃」の格好の標的になるというのだ。他の複数の専門家も、同様の問題点を指摘している。

「RORO船が戦時の脅威となるのは、中国側がこれらの船舶に対して、空と海から持続可能な防護を提供できる場合のみだ。つまり、これらのRORO船が母港とする中国の港湾や、それを支える港湾インフラに対する敵軍からの攻撃を受けてもなお、RORO船で構成されるこの船隊が残存し、持ちこたえることができる体制を中国が整えている場合だ」

「言い換えれば、これらのRORO船が脅威となるのは、中国が台湾海峡に確実な『海の橋』を維持できる時のみ、ということだ。すなわち、この戦域において、人民解放軍の海空軍が、敵軍の攻撃を確実にはねのけられる状態を意味する」とコーは指摘した。

(翻訳:ガリレオ)

 
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、2日に予算教書公表 環境・対外援助など

ワールド

イスラエル、シリア大統領官邸付近を攻撃 少数派保護

ビジネス

JAL、今期の純利益7.4%増の見通し 市場予想上

ワールド

NZの10年超ぶり悪天候、最悪脱する 首都空港なお
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中