最新記事
台湾侵攻

台湾海峡に「海の橋」を架けるため中国がRORO船の生産を増強

China Ramps Up Building Ships That Could Help it Invade Taiwan

2023年10月18日(水)19時17分
アーディル・ブラール(中国ニュース専門ライター)

南アフリカ、ケープタウンの海軍基地に停泊したロシアのコンテナ船(2022年12月) REUTERS/Esa Alexander

<平時には民生用に使われていても、いざ台湾侵攻となったら軍用に徴用し、人民解放軍が台湾海峡を渡るための橋になる船とは>

<動画>世界最大のRORO船、驚くべき内部

中国は、RORO船と呼ばれる船舶の生産を増強している。RORO船とは、「ロールオン・ロールオフ」の頭文字を取ったもので、荷物を積んだトラックやシャーシ(荷台)ごと輸送が可能な船舶を指すが、中国で今作られている船は、台湾への攻撃時に使われる可能性もある。

アメリカのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のチャイナ・パワー・プロジェクトが新たに発表したレポートによると、中国のRRORO船増産は、台湾への攻撃においてこれらの船舶を軍用に供す戦略の存在を示唆しているという。過去数十年、台湾海峡からの上陸作戦阻止を主眼に置いてきた台湾の政治・軍事部門の幹部にとっては由々しき問題だ。

RORO船は、乗用車やトラック、バス、トレーラーを載せ、海の向こうの目的地へと輸送する。中国製電気自動車(EV)への需要増を受けて、RORO船は、中国で生産されたEVを世界各地に運ぶ際の主要な輸送手段となっている。しかし、中国の軍事ストラテジストたちは、RORO船を台湾への攻撃時に転用する案をひそかに検討してきた。

2026年までにあと最大200隻も

CSISのレポートは、こう記している。「RORO船は、一般的には兵器として使われるものではないが、中国の軍事計画立案者たちは、軍民両用(デュアルユース)が可能なその特性に目をつけ、人民解放軍の能力を高めるために利用しようとしている」

中国政府は2016年、中国の海運会社に対し「国益を守るための軍事作戦」を支援することを義務づける法律を成立させた。民間企業が保有するRORO船が、台湾への攻撃時に徴用される可能性はある。

世界全体では700隻以上のRORO船が存在するが、そのうち中国企業が運航している船舶の数は100隻に満たない。CSISレポート執筆者たちの分析によると、中国の造船所では、2023年から2026年の間に最多のケースで200隻のRORO船を建造する可能性があり、これは、軍民両用の能力を持つ船舶の建造数としてはかなりの増加幅だという。

「言い換えれば、現在の人民解放軍は、大人数の部隊や装備を主要戦区に輸送するための軍事的資源を十分に有していないということだ。人民解放軍が台湾に対して大規模な陸海軍合同の上陸作戦を実施するなら、さらなる装備が必要になる」と、CSISレポートには記されている。

シンガポール南洋理工大学ラジャラトナム国際学院(RSIS)の主任研究員、コリン・コーは本誌の取材に対し、RORO船が本来の目的とは異なる目的に転用される可能性はあると述べた。

「ここで考えるべきシナリオは2つある。平時のグレーゾーンと有事発生時だ。前者のケースでは、RORO船に使うことはかなり限定されているだろう。後者では、RORO船に限らず特定の用途を持つ民間船が徴用される可能性がある」

 

建築
顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を持つ「異色」の建築設計事務所
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは146円後半へ上昇、トランプ関税で

ビジネス

アングル:超長期金利再び不安定化、海外勢が参院選注

ワールド

日米韓が合同訓練、B52爆撃機参加 3カ国制服組ト

ビジネス

上海の規制当局、ステーブルコイン巡る戦略的対応検討
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 10
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中