最新記事
教育

全国学力調査から見えてくる、地域内の「学力格差」

2023年9月20日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
教室内の風景

政府統計も使い方によってはさまざまなことが見えてくる recep-bg/iStock.

<北陸3県や秋田などでは、子どもの学力が「底上げ」され、他地域と比べて学力格差が小さい>

毎年4月に『全国学力・学習状況調査』が行われる。目的は「義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図るとともに、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる。さらに、そのような取り組みを通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する」ことだ(文科省)。

自分の地域(学校)の結果を、全国水準ないしは、社会経済条件が似通った地域(学校)と比較してみることも必要で、そのための参考資料として47都道府県別の平均正答率が公表されている。だが平均値は一部の極端な値に影響されるので、代表値としては適切でない。また集団全体の水準だけでなく、集団内部の散らばり具合(格差)も把握したい。

元の資料にまでさかのぼって、独自の指標を計算してみる余地はある。<表1>は、公立小学校6年生の算数の正答数の分布だ。

data230920-chart01.png

調査対象となった96万4350人のうち最も多いのは、16問中12問正答できた児童だ。その数は9万8413人で、全体の10.21%に相当する。

この表をもとに、ちょうど真ん中の児童が何問正答できたかを計算してみる。右端の累積%値が50.00の児童だ。以下の2つのステップにより細かい小数点まで出せる。

・按分比=(50.00-49.99)/(59.84-49.99)≒0.001
・中央値=11.00+(1.00×0.001)≒11.00問

16問中11問正答ということは、正答率は68.76%となる。集団の真ん中の児童が何%正答できたか、すなわち正答率の中央値(Median)ということになる。集団全体の代表値としては、平均値よりもこちらの方がいい。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「キーウに最大規模の攻撃」、世界遺産

ビジネス

韓国、対米交渉担う通商交渉本部長に呂翰九氏 文政権

ワールド

台湾、中国スパイ容疑で4人起訴 元高官との情報

ビジネス

アングル:超長期金利に低下圧力、財務省対応で思惑 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 4
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 9
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 10
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中