最新記事
注目ニュースを動画で解説

ワグネルの今後は? プリゴジンなき「高級武装ブランド」について、1つだけ確かなこと【注目ニュースをアニメで解説】

2023年9月11日(月)17時10分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
プリゴジン

Newsweek Japan-YouTube

<「プリゴジン死してもワグネルは死なず」──ワグネルはプーチン体制内でどのように生き続けるのかを考察したアニメーション動画の内容を一部紹介>

8月23日、傭兵組織ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジンが乗っていた小型ジェット機が墜落し、死亡。トップと複数の幹部を失った組織は今後どうなるのか。確かなことが1つだけある──。

本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「ワグネルの今後は?プリゴジンが消えても「高級武装ブランド」はアウトローを魅了し続ける【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。

 
◇ ◇ ◇

プリゴジンの死がロシア大統領ウラジーミル・プーチンの指示した暗殺だったことはほぼ間違いない。凄惨かつ残酷な手口だが、これが自分に歯向かう者の運命だという見せしめとしては効果的だ。しかしそれは、プリゴジンが一代で築き上げたワグネルの「ブランド」にふさわしい死に方でもあった。

nwyt230911_2.jpg

ワグネルという高級武装ブランドには過剰な暴力がよく似合う。

ウクライナ戦争で有名になる前から、組織はブランド構築の努力を続けてきた。国内外に向けた宣伝工作と人材確保のため、自主制作の映画を何本も発表している。

中央アフリカ共和国が舞台の2021年の作品『ツーリスト』では、戦闘員がいかに高度な訓練を受け、殺傷能力に優れたエリートかを描いた。

nwyt230911_5.jpg

過激派組織「イスラム国」(IS)も斬首や火刑、人身売買などの動画をばらまいて心のゆがんだ男たちを集め、一般大衆には恐怖心を植え付けることに成功した。

一般受けする手法ではないが、一部の変質者を標的とするマーケティングには効果的だ。ワグネルも同じだが、その暴力性に魅せられるのは変質者だけではない。世界各地の独裁者や軍事政権、クーデターをもくろむ者たちもワグネルの大事な顧客だ。

nwyt230911_6.jpg

ロシアの国営メディアもワグネルに好意的な映像を流してきた影響で、ワグネルは国内で人気を誇っている。

ただし、ウクライナでの愚行と蛮行のせいで国際的な評判を落とした。ならず者に粗末な武器を持たせ、まともな訓練もせずに戦場に送り込んだ今のワグネルは、もはや「高級武装ブランド」ではなく、ほぼ「暴力を自己目的とする無法集団」に成り下がっている。

nwyt230911_12.jpg

そうは言っても、このブランドには今も一定の価値がある。オーナーのプリゴジンと複数の幹部を排除した今、プーチンはワグネル・ブランドの再構築を考えているかもしれない。今なら好きなように操れるからだ。

プーチンはワグネルを政府の指揮命令系統に組み込もうとするだろう。ロシア軍の指導部を批判することは当然許されない。

nwyt230911_14.jpg

ただし、ワグネルの運営するテレグラム・チャンネル「グレーゾーン」には、報復を示唆するかのような宣言も掲げられた。

「ワグネル・グループの総帥にしてロシアの英雄、真の愛国者であるエフゲニー・プリゴジンは、ロシアを裏切る者たちのせいで命を落とした」

先は読めないが、確かなことが1つだけある。誰が次のブランドの顔になっても、過剰な暴力とその拡散が終わることはないということだ。

nwyt230911_16.jpg

■詳しくは動画をご覧ください。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中